ゆず塩

火垂るの墓のゆず塩のネタバレレビュー・内容・結末

火垂るの墓(1988年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【一言あらすじ:戦争孤児となった兄妹が、面倒を見てくれている叔母の元から出て行き、防空壕で生活を始めるが、栄養失調で亡くなる話。】

【テーマ:戦争の生み出す悲劇】
戦争によって生活が崩壊する兄妹の話、ですよね。晴太が警報と一緒に防空壕から飛び出て、火事場泥棒をして笑っているシーンは、それなりにショックだったかな。事情を知っているから晴太の気が狂ったとまでは思わなかったけど。畑泥棒をしたり、ガタが外れていく様子が自然で、嫌悪感はないけれどそれがある意味いびつなのかも。過激ではないから、戦争で気が狂った印象は薄いけれど。戦争によって秩序は乱れるし、人と人の関係も希薄になるのかなって思ったり。

【好きな点】
・叔母さんが冷たい人だという見方を子供の時はしていたけれど、晴太にも問題があることに大人になると気が付ける。でも、晴太は14歳なのだから……自分の娘よりもかなり年下なのだから……叔母さんはもう少し晴太に親切というか、辛抱強く付き合えたら良かったのに……と思ってしまう。未成年とか……未熟な人に対して、辛抱強く付き合うのは大人の役割なのかなって改めて思いました。まぁ、大人にも限界があるのはわかっているんだけど。
辛抱強い大人が理想だけれど、現実はもっと無情で厳しい、ということがよく表現できてますよね。

・晴太に同情する視点もあれば、晴太が愚かだと見せる視点もある。叔母さんが意地悪に見える視点もあるが、厳しい現実の中で生きているからしかたない、という説得力のある視点もある。
晴太と叔母さんを良い人ではなく、悪人でもない、公平な視点でを見せているのが本当に面白い。
そう考えると、宮崎駿監督は理想の形(カッコいい大人像)を見せているのかなぁって思いました。

・節子が亡くなったあと、『はにゅうの宿』をBGMに遊んでいる節子のイメージ映像(?)が泣けて仕方なかった。泣かす演出が上手ですよね。劇中で出てきた小道具を使っててニクイ。(冒頭の、晴太と節子が電車に乗ってるところで目が潤んだ私ですが。なんで泣けたのか自分でもよく分からぬ。)

・お母さんの怪我とか、叔母さんの意地悪な感じとか、家を飛び出した晴太と節子の生活が悲惨な物になるとか、どれもショッキングだったな……。そう思うとやっぱり、戦争の悲惨さを伝える映画なのか。

<好きじゃない点>
・節子と晴太が一緒に遊んでいるシーンがあまり興味を惹かれない。楽しそうではあるが……それよりも叔母さんとのやり取りの方が興味深いな、と。晴太と節子が死ぬことが決まってるから、叔母さんとのぶつかり合いを書き続けても暗くなる一方でしょうがないから、楽しそうに遊ぶシーンが入るのだろうけれど。先の展開が気になるシーンじゃ無い気がして……。晴太が悪手を打ち続ける話だから、こうなるのはしかたないのかなー。でも、子供にはちょっと退屈な映画な気がする(というか、退屈だった思い出がある)。
ゆず塩

ゆず塩