丹叉

BROTHERの丹叉のレビュー・感想・評価

BROTHER(2000年製作の映画)
4.6
「もう終わりだな、みんな死ぬぞ(笑)」と、にやにやしながら死を匂わす山本。死に向かっているというのに、なんなんだその余裕は。

日本人だから、と当初はどこか下に見ていた弟の連れ達も、山本の暴力気質、殺気溢れる鋭い眼差し、無言の圧力、どれだけの修羅場を潜り抜けてきたのだろう圧倒的なノンバーバルに虜になり、忠誠心を顕にし子分になっていく過程は、まさに現在進行形で北野武のカリスマ性に惹かれ、狂った様に彼の映画や人生そのものを詮索している自分を見ているようだった。

日本人監督がロサンゼルスで映画製作をしようもんなら、ハリウッドは黙っているはずがなく様々な制約を受けるだろうが、しかし今作は商業主義的な全層受けアクション映画に成り下がる事なく、北野武の作家性が充分に発揮されている。ハリウッドのシマで自由に映画を撮る北野武、渡米すると同時に圧倒的な実力ですぐさま裏社会でのし上がる山本。

芸術性と娯楽性が両立した銃撃戦シーン、久石譲によるヤクザの人情を表現するに相応しい感情的なスコア、そして単調なセットアップではなく、ヤクザの威厳ある風貌をより際立たせる山本耀司の洗練されたファッション。米国での自由な映画製作の実現に尽力した森昌行のプロデュース。まるで隙が無い。
丹叉

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