ひちょ

ローマ法王の休日のひちょのレビュー・感想・評価

ローマ法王の休日(2011年製作の映画)
3.3

この映画、邦題や宣伝の打ち方が悪いように思うのだけど、どうなのかしら。

笑って、ホロリ。ではあるけれど、何というか楽しい映画ではないのよね、これ。

聖職者であろうとローマ法王であろうと詰まるところは個人としての人間であるし、正しくい続けること、そしてその象徴として世界の人々の前に立たなくてはならないという重圧というのはそれはもうすごいもので、バチカンの人たち、みんな睡眠薬や精神安定剤をガバガバ飲んでるのよね。事実かどうかはわからないけれど。

もちろん笑える部分もあるけど、あくまでもそれは笑えるように描いているのであって、この映画の本質はコメディではないから、その黒いユーモアを持って描いた部分のみを切り取ってコメディ映画調の邦題や宣伝をつくるのは、何というか、違うなあと思った。

裏切られた!面白くなかった!と言っている人が多くいるのは、それらによって作られた先入観と実際の映画の内容が合致しなかったからだと思う。しょうがないよね。
わたしも先入観バリバリで笑えて軽い映画観ようと思って選んだから、あれ?!ってなったもん。

原題は、「新しい法王が決まった」という意味の言葉らしい。
確かに新しい法王が決まったんだよ。

その新しい法王に決まった方、あまりの重圧に耐えきれなくなってしまい、精神科にかかったりなどするのだけど、そこで「子ども時代の愛情の欠乏が原因している」と言い渡されるのね。それは結局その精神科医が「愛情欠乏症」とかいうやつに固執する医者だった、という話で、新法王はそれではなかったんだけど。

新法王は、ちっぽけで無力な等身大としての自分が、法王なんかにはなれない、と考えるのよね。
どうなのかなあ。みんな結局は等身大の自分として生きていくしかないと思うんだけど、そういう立場になった人って、どうやって、たくさんの人々が求める理想と、本当の自分とのすり合わせをやっているんだろう?

わたしはずっとそういう立場になることを意識的・無意識的に避けてきたからなあ。
今のわたしには観ていてしんどい映画だった。
ひちょ

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