みおこし

クラッシュのみおこしのレビュー・感想・評価

クラッシュ(2004年製作の映画)
3.7
アカデミー作品賞を観よう第16弾!!あと6本!!連続で観るとどれも重い!!(笑)今回は、巷でなぜか最も地味なアカデミー作品賞と言われている本作(笑)。いや、そんなことないです!!見応えたっぷりの傑作でした。受賞した時も物議を醸していましたが、過小評価されすぎな気がします。

人種のるつぼ、アメリカ・ロサンゼルスを舞台に、1つの交通事故を中心に、それを取り巻く人々の36時間を描いた作品。ドン・チードル、マット・ディロン、サンドラ・ブロック、テレンス・ハワード、タンディ・ニュートン、ブレンダン・フレイザー、ライアン・フィリップなどなど...次から次へと登場する豪華キャスト。

とにかく登場人物全員が何かしらの形で人種差別をしている。悲しいのは、「自分は差別なんかしていない」という人ほど実は本人も気づかないうちに差別の目を向けているということ。もしかしたら私たちも知らず知らずのうちに、そうしているのかもしれない。
差別行為を無視することも差別だし、逆に言い返すのも差別だし。本作を見ていると、何が本当の正義なのか、悪なのかよく分からなくなってきます。
しかし、本作のそんな差別主義者たちは全員ただの悪人として描かれているわけではなく、自分自身も差別の対象になっていたり、何か根本的な弱者としての事情を抱えていたり、ワケありの人たちばかり。分かりやすいのはマット・ディロンの役回り。一見人としてサイテーの差別主義者ですが、彼の背景にも諸事情があると分かれば彼を悪人、と決めつけることはできなかったり。
そんな人種問題の色んな要因を、白人、黒人、アジア人、ヒスパニック、アラブ人...など、様々な人種や民族の人たちが体現する約2時間でした。
人は色んな側面を持っていて、その時々で人への対応も変えるもの。そんな人間の八方美人が引き起こすトラブルが、シビアに描かれています。『アメリカン・ビューティー』と合わせて観ると、アメリカの闇がダイレクトに分かって興味深かったです。

渋い役者陣の中でも、個人的にはテレンス・ハワードが本当に良かった...!人当たりが良いけれど、心の奥に隠した怒りや悲しみは誰よりも深くて、とあるシーンでそれを涙ぐみながらぶちまける演技が鳥肌もの。素敵な役者さんだなー!
タイトル通り、性別も人種も地位も異なるアメリカの人々が、心や体全てでぶつかり合う衝突(crash)の果てに気づいた大切なメッセージ。深い映画でした。
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