富樫鉄火

ある歌い女(うたいめ)の思い出の富樫鉄火のレビュー・感想・評価

4.5
#41 イスラーム映画祭7@ユーロ
1994年の製作で、もう古い映画の部類だが、これはいい作品だった!
1950年代、チュニジア王宮最後の日々を、下働き女性たちの視点で描いたもので、カメラは王宮を一歩も出ない。
王宮といっても、せいぜい大きな屋敷程度のつくりだし、室内装飾もそれほど派手ではない。
よって最初は地味な映画だなあと思っていた。
しかも、「奴隷扱いかと思いきや、けっこう女性たちものんびりと楽しそうじゃないか」と思った。
だが、そう単純ではないことが、だんだんわかってきて、複雑な気分になってくる。
ラストは、フェミニズム云々とは関係なく、感動的だった。
流れている音楽は、アラブの歌姫、ウンム・クルスームの曲だそうで(近年、彼女の評伝小説『詩人の恋』邦訳が出た)、なるほど、すごい存在なのだなと納得した。
主演のHend Sabryは、これがデビューのようで、IMDBによると1979年生まれだから、このとき14~15歳か。
同じく今回上映された『ヌーラは光を追う』も、彼女の主演映画で、ここではもう40歳前後になっている。
(♯42へつづく)
富樫鉄火

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