スーパーエイプマン

母のおもかげのスーパーエイプマンのレビュー・感想・評価

母のおもかげ(1959年製作の映画)
3.5
清水宏監督の遺作にして後期の代表的な一本と言っていいのでは。
例えば初期〜中期にも見られた屋内で横移動するカメラは、状況を横から俯瞰する視点から人物に寄り添うように移動していくものへと変化しているし、作劇的にも『子供の四季』や『みかへりの塔』のようにエピソードの積み重ねで語っていくのでなく、一本の流れの中でドラマを語ろうとしており、こうした変化からは良くも悪くも"洗練"を感じさせる。
本作では亡き母と"新しい母"(淡島千景)の間で揺れ動く子・道夫(毛利充宏)の心情に焦点が当てられていて、特に隅田川周辺を道夫が当て所なく走る場面や、浅草で母の形見の鳩を探す場面などはまさにロケーション撮影の魅力が存分に発揮されている。
周囲から取り残されたやり場のない思いを抱える少年の姿は『大人はわかってくれない』のジャン・ピエール・レオーを思い起こさせるが、この作品と早すぎたヌーヴェル・ヴァーグとも称される作家の遺作が同年に作られていることに奇妙な偶然を感じずにいられない。