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男はつらいよ 寅次郎相合い傘のMiYAのレビュー・感想・評価

4.0
シリーズ14作目。マドンナは2回目の登場の浅丘ルリ子

寅さんとリリーの関係が特別であることは最初から明らか。いつもマドンナと話をするときは緊張してかっこつける寅さんが、リリーに対しては普段と変わらぬべらんめえ口調で憎まれ口を叩く。だから、2人は衝突もする。でもすぐ仲直りする。さくらが言うように2人の関係は既に夫婦のようだ。

さくらがリリーから「結婚してもいい」という言葉を引き出した場面は、本シリーズで寅さんの恋愛成就に最も近づいた瞬間でしょう。でも土壇場で2人は自分の気持ちに素直になれない。それは、寅さんが言うように、ひとつの場所にじってしていられない性分であることが(似た者同士ゆえに)わかっていたからなのでしょう。事実、リリーは寿司屋の亭主のもとから飛び出すという「前科」がある。それにしてもだ、2人とも自分の気持ちに従って素直に行動してもいいのではないか。もどかしくて仕方ない。

そんな2人の出会いと別れに翻弄される本作ですが、そのなかで船越英二(ポリデントのCMでおなじみ!)演じるパパがなんともいい味を出しています。家庭を持っていながら、自由に憧れ、初恋の人に思いをはせる。なんとも身勝手な人物ですが、彼を加えた3人による前半のロードムービー(?)は短いながらも実に楽しい。

本作は傑作だとは思いますが、入門者にはすすめられないかも。それまでの寅さんの歩みを知っているからこそ、かみ締めることのできる味わいがあるような気がします。
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