まぐこ

父親たちの星条旗のまぐこのレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
3.5
硫黄島の戦いを日米双方の視点から描いた「硫黄島プロジェクト」、アメリカ側の視点で描いたのが「父親たちの星条旗」です。どちらか片方だけでなく、両方とも見てほしいです。

本作は、「硫黄島で戦う兵士の姿」と「生き延びた兵士の葛藤する姿」を描いています。すべてが時系列順ではなく、フラッシュバックのように硫黄島の記憶が蘇ります。

硫黄島での壮絶な死線を潜り抜けたアメリカ兵士たちは、硫黄島の摺鉢山を制圧した後、頂上に星条旗を掲げました。星条旗は疲弊しきった兵士と、戦争にうんざりしていたアメリカ国民の士気を高め、旗を掲げた6人の兵士は一躍「英雄」ともてはやされます。

<ネタバレ>
旗を掲げ、英雄となった3人の男(衛生兵のドク、インディアンのアイラ、伝令のレイニー)は、国民の歓声に戸惑いながらもしっかりと応えます。
3人は戦争に勝つため、国民に国債を買ってもらうための広告塔となったのです。

ドクは国に還ってからも、衛生兵として数え切れないほどの仲間の最期を見てきた拭えない過去が何度もフラッシュバックします。
アイラは戦場で死んだ仲間ではなく、旗を掲げただけの自分が英雄扱いされることに嫌疑の念を抱き、最期まで戦いたいという戦場への未練から酒に溺れていきます。
レイニーは他2人とは違い、国に還ってきてからの自身の役目(国債のPR)を果たそうとし、アイラと何度も衝突します。
彼らにとって戦争は見世物やショーなんかではない、しかしそのショーは戦争を勝つために必要である、その葛藤が垣間見えます。

戦争を題材にした作品でいつも思うのは、スポットライトの当たらなかった兵士たちと、弔え切れない遺族が数え切れぬほどいるということ。

戦場に行かずして戦争を分かった気でいる国民たち、それは私たち現代人にも言えることなのかな、と思いました。

現代の、とくに日本で生きる私に戦争のすべてを理解することはできないかもしれませんが、それでも理解しようと寄り添うことは出来ると思っています。その気持ちを忘れないでいたいです。
戦後も晴れぬ思いで生き抜いた彼らのことも。
まぐこ

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