観た直後は、終わり方が物足りなく感じてしまいなんだか拍子抜けしちゃったけど
少し置いてから考えてみるとあれも人生の一つか、と納得した。
死ぬ直前くらい自分のために生きたっていいわけで。
それに、彼女は全てを一人で持って行った。
辛いことも恋心も、寂しくて孤独なことも、未来への未練だって。
あの覚悟は、生半可じゃない。
リーも、言うなればアンの願いの巻き込み事故。
でも、互いに幸せな時間に思えてたのだから、決して無駄な関係じゃなかった。
結果がどうあれ、壁の色は塗られ、部屋に温かみを取り戻した。
残された者は、なぜ言わなかったと怒るだろうけど、終わりが迫る恐怖を全部一人で持って行った事は勇敢だし、彼女の望みなら、それも人生の一つの締め方としていい選択だ。
ダンは父親としても男としても魅力的。
生きている間に旦那以外との恋をしてみたい、母親になった人間がそんな贅沢な望みをするのは不謹慎でみっともないと大半が思うだろう。
でも命が潰える人を前に、死ぬギリギリまで母親として、妻として真っ当に生きろと果たして言えるのか。
そんな綺麗事を言えるのは、来月はどこに遊びに行こうかなんて時間に余裕がある人達だろう。
余命宣告された後のスーパーでの対比もそうだ。
アン以外はみんな機嫌よく、陽気にダンスなんかしたり、急いでいる人の事なんて気にも留めない。
アンは死ぬと知り自分のために生きる、それも誰にも何も知らせずに。
なんて孤独な人なんだろう。
なんとかやりたい事をやる、そこに集中する事で死が近づいてる事からほんの少しだけ離れていられる。
でもやっぱりずっと死がついてまわる。
体の感覚は変わっていき、リストをやり切ろうとする事で、思わず吐き出してしまいそうな自分の口を何度も塞いだだろう。
誤算だったのは、本当にリーに恋してしまった事。
母の内側を死ぬ直前になって覗けた事。
後は、家族を託せる女性が自分と同じ名前で、自分も好きと思える素敵な人がすぐ隣に引っ越してきた事。
嬉しい誤算。
目標もほとんど達成できた。
それでもアンは平気なふりして寂しそうに笑っていた。
ここまでくると、私の解釈は甘やかし過ぎかもしれない。
とにかく、あのアンの人生も受け入れたい。