てつこてつ

理由のてつこてつのレビュー・感想・評価

理由(2004年製作の映画)
2.5
原作を読んだのは、もう十年以上前・・。細かい内容の部分はすっかり忘れていまっているが、それでも、’現代社会では、実際に血の繋がりのある肉親より、孤独な者同士の、言わば、赤の他人との絆のほうが強く確かな場合もある・・’という、非常に共感できる強いメッセージだけは、しっかり記憶に刻まれているし、他の宮部みゆき氏のどの作品よりも好きな一冊。

原作が全てタワーマンションの一室で起きた殺人事件に関わる人物のインタビュー形式で綴られているため、映像化不可能と言われていたので、大林宣彦監督が果敢に映像化に取り組み、しかも原作に忠実に、2時間40分の長尺をほぼ登場キャラクターのインタビューで描いたというチャレンジ精神は素晴らしい。

だけど、あまりにも多くの登場人物の中に、所々でビッグネームを起用しているので、ただでさえ、競売、占有という、やや複雑なテーマを扱っているので、作品に集中するのが結構難しい。特に冒頭にマンションの管理人役の岸部一徳や隣人の久本雅美が、ほぼ棒読みで15分くらい喋るので、そこで挫折しそうになるかも。

もうちょっと登場キャラクターを削って、尺もあと30分は何とか削れなかったものか?

この映像化作品で一番残念なのが、殺された3名の被害者の事情に深く触れておらず、冒頭に書いた原作のテーマがあまり伝わってこなかった事。

殺人の再現シーンの描写や、エピローグを劇中劇として描くなど、大林監督ならではの撮影手法は、良くも悪くも健在。
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