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アンブレイカブルのsiaのレビュー・感想・評価

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
3.5
この映画をTSUTAYAで初めて見かけた時、「あの『シックス・センス』の監督作品でしかも『ダイ・ハード3』のコンビが主役!?」ということで猛烈に興味を惹かれてレンタルしてきたのを覚えています。

その時は正直「なんだかよくわからん映画だったなあ」という程度の印象だったのですが、様々なアメコミ作品を知るようになった今改めてこの映画を見るとまったく違った印象を受けました。

『アンブレイカブル』はまさしくシャマラン流の「ヒーロー映画」です。

近年では『ダークナイト』や『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』に代表されるような、スーパーヒーローという存在を一定のリアリティーある世界観に落とし込むという切り口の作品が増えてきています。
『アンブレイカブル』はそれらの先駆けであり、なおかつ最たるものであると言えます。

この映画はどこまでも静かで、地味です。そして恐らくそれこそがこの映画の狙いです。
主人公のダンはタイトルが示すように無敵の男であるわけですが、派手に大バトルを繰り広げたり空を飛んだりすることはありません。

徹頭徹尾リアルなトーンで描くことによって、ヒーロー映画の持つ荒唐無稽さやそれを現実に持ち込んだ際の違和感といったものを敢えてそのままに残しています。

この映画が描こうとしているのは善悪やヒロイズムなどではなく、アイデンティティーの確立だからです。

この映画の対立軸にあるダンとイライジャのふたりは、どちらも人生に疑問を感じ、在るべき姿を探して苦悩しています。
最終的にふたりはそれぞれまったく真逆の形でそれを見出すことになります。

そういう意味では、アメリカンコミックという題材は実際のところツールのひとつに過ぎません。
この映画はそれらを通じて彼らが存在意義を獲得するまでを描いたオリジン・ストーリーなのです。

でもこれって結局アメコミと同じ構図を取っているんですよね。
内省や他者との関わりの中で自身の存在意義を確立していくという流れはアメコミの基本的な構造です。
だからやっぱりこれは「ヒーロー映画」なのだと思います。

派手さやインパクトには欠けるものの、改めて見直すことで新しい発見のある非常にユニークな作品だと感じました。

しかし後々を考えるとサミュエル・L・ジャクソンがこうやってアメコミについて語っているのを見るのは感慨深いものがありますね。
これもシャマラン監督の先見の明ということでしょうか。


2019/1/17 再鑑賞
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