一条和馬

ROCK YOU! [ロック・ユー!]の一条和馬のネタバレレビュー・内容・結末

ROCK YOU! [ロック・ユー!](2001年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

藁葺き屋根職人の息子で騎士への奉公に出ていた主人公ウィリアムが死んだ主に代わり馬上槍試合に出場し、戦うお話。

中世ヨーロッパの馬上槍試合といえば貴族の華なので、当然平民は出場出来ません。しかしウィリアムは同じく身分を偽って出場していた王子と(身分がバレている状態でも)正々堂々戦い、そして後に平民である事がバレた際に本物の爵位を授かります。これだけでも「騎士」としての物語は面白いですが、それに至るまでの話…一目惚れした貴族の娘や、ライバルにあたる傭兵団の騎士との関わりや対比も素晴らしい。

最初に出会った試合では騎士達は自分の功を自慢し「この勝利を貴女に捧げる」と言いますが、ウィリアムはその中で一人だけ自分の功を驕らず(無いとも言いますが)「貴女の声を聞かせてほしい」と口説きます。そこでウィリアムが気になった娘ですが、次々勝利を重ねる内に「貴族寄りの思考」になってきたウィリアムに「愛を証明するなら負けて」と言われ、本当に負けるウィリアム(その後に「残りの試合全部勝って」と心変わりされて本当に全部勝ちますが、同時に彼女の心も勝ち取ります)。そして平民だと知ってウィリアムが捕まる前に「自分が貧しくなってでも貴方を助けたい」とまで言わせたのですから、正しくラブストーリーとしてもグッド。

そしてライバルの騎士ですが、最初にウィリアムを「技術は無いが肝が据わってる」と評価するものの、自分が王の命令で戦場に出ている間に優勝を重ねるウィリアムに嫉妬し、またそんな彼にヒロインが靡く事を恐れてわざと悪逆無道を行い軍を追放されてまでも槍試合に戻り、技術でも勝てないとくれば試合外のウィリアムをつけて正体を見破り陥れ、それでも試合に姿を見せれば試合用の槍の穂先に細工をして殺害を企てる等、物語でウィリアムの成長と対比するようにその醜悪さが顕著に現れます。最後の試合で怪我をして鎧を脱ぎ捨て生身で戦うウィリアムと全身を真っ黒な甲冑で覆ったライバルも視覚的にはっきりと対比になっていたのが素晴らしかった。試合の結果はもちろん、語るまでもありません。

なにより素晴らしいのが、そんな様々な要素が互いの足を引っ張ることなく綺麗に纏まり、一つの美しい物語として完結した事です。タイトルがQueenの名曲から来ているだけでなく各所で挿入歌として流れる彼らの歌に合わせて騎士達の槍が交差し、男女の愛が芽生え、本物の「騎士」とは何かを示してくれる、とても面白い映画でした。
一条和馬

一条和馬