トランティニャン

ツォツィのトランティニャンのレビュー・感想・評価

ツォツィ(2005年製作の映画)
3.0
ヨハネスブルグに立ち寄ったことのある人間としては見ずにはいられない映画だっただけに、出来に辛口になってしまった。

スラム街「ソウェト」で育ち、日々凶悪犯罪に手を染めるツォツィ(不良の意)が、ある赤ん坊に出会ったことで更正のきっかけをつかんでいく、というストーリーそのものはどこのスラムにでも当てはまりそうで凡庸だし、そんな小さくない彼の心の動きすらしっかり描けているとはいいがたく、役者の演技は素晴らしいのに、どうもいまいち乗り切れない。

舞台装置としてのヨハネスブルグに乗っかり過ぎてるのだ。行ってたら確実にただでは済まなかったであろう駅のターミナル(白人とか全然映ってなかった)、余りにもライトな殺人が日常茶飯事的に起こっているヘヴィな現実、襲撃される家のセキュリティの尋常じゃなさ。あれが現実。安宿でさえ外壁には高圧電流を引いていたし、宿主の車のトランクのカギは壊されてたのでゴムで縛ってた。郊外は夜でも安全で、近くのスーパーに買い物しに行ったぐらいだけど、やっぱり今思い返すと恐ろしい。そういうところは要所要所描けていただけに、淡々と静かに展開される人間ドラマに物足りなさをどうしても感じてしまう。