中国の世界遺産・楽山大仏を舞台にした秘宝サスペンス。中国初のアクション映画。ヒロイン役に「芙蓉鎮」（1987）のリウ・シャオチン。

文化大革命の終結前夜。東南アジア在住の華僑・司徒君は、楽山大仏霊雲寺の海能法師から招かれ帰郷する。法師は、かつて司徒君の父が楽山大仏の修復に尽力し何者かに殺された事、そして死ぬ前に“楽山大仏に隠された財宝の秘密”を法師に伝えた事を明かす。その夜、異形面の男が法師を襲い「財宝の秘密を話せ」と脅し、拒否する法師の眼をえぐる。司徒君は武術の女達人・孟潔（リウ・シャオチン）らと対抗するが、暴漢たちは楽山大仏の爆破を企てる。。。

巨大仏マニアとしてはたまらない一本だった。世界最大の摩崖仏（71ｍ）を舞台にサスペンスが繰り広げられる。伝奇ミステリー、太極拳アクション、観光映画の要素が散りばめられ楽しく観ることが出来た。

本作の背景には、文化大革命時（1966～1976）に紅衛兵が仏教寺院を徹底破壊した史実が横たわる。文革解放５年目に放たれた自由なエンターテイメント演出は記録的な大ヒットを呼んだ。

演出は1981年制作にしては古めかしくぎこちない。文革で映画技術が進まなかった状況が感じられる。スコアは個人的嗜好を加えて高めにつけておく。

本物の巨大仏でロケした映画は世界的にも稀で、他には東京湾観音ロケの「千里眼」（2000）、加賀大観音ロケの「宇宙人の画家」（2022）あたりしか思い当たらない。いつか日本最大の牛久大仏、二番目の仙台大観音が映画に登場することを期待する。

ちなみに中国映画「不肯去観音」（2013）のラストには浙江省の普陀山南海観音像（33ｍ）が映し出される。日中の仏教交流を描いた歴史映画だが、何故か日本未公開。例によって某連中による妨害か？と陰謀論を唱えてみる（笑）

※CG巨大仏の映画だと中国・香港合作「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」（2010）の超巨大観音は最高に素晴らしかった。日本のインディペンデント「大仏廻国」（2019）は作品の出来がかなり残念。