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ミスティック・リバーのtomoのレビュー・感想・評価

ミスティック・リバー(2003年製作の映画)
4.1
筋も結末も知っていたので見たことがある気がしていたが、視聴中どうも見覚えがなく、恐らく原作のみ読んだことがあったようだ。とは言え本作の本質は事件の謎解きではなく人間ドラマなので、結末を知っていても飽きずに見られた。
どうにも救いようのない話。罪のない子供が欲まみれで狡猾な大人に理不尽に傷つけられること、それで日常が壊れてしまっても遠くへ逃げることもできず狭い町の中で気まずさを孕んだまま大人になること、僅かな運命の差で被害者にならなかった子供も真っ直ぐには生きられないこと、どれも悲劇的でありながらそこらにいくらでも転がっていそうな話であることがやるせない。「この町の王」などという表現で妻に正当化された男も結局は狭い町のごちゃごちゃした人間関係の中で、ケチな不良同士の争いで殺したりその身内に身内を殺されたりとなんともつまらない悲劇を繰り返すのだ。その妻は継娘を本当はどう思っていたのか、夫とやたら近く見える従姉妹に対してはどうか。被害者の少女に罪はないが、ラスベガスに駆け落ちして結婚しようという幼すぎる計画がこれまたなんとも愚かで哀しい。真犯人の描写から、子供は大人が思うほど善良ではないことが痛烈に示されるし、大人も子供が思うほど強くはない。ほぼ全ての人物が何かしらの愚かさや暗さと共に描かれていて、数少ない例外と言える幼く無垢なマイケルもきっとこの先は明るくない。彼もまたいつか、父からだと思い込んで受け取っていた毎月500ドルの本当の送り主である父の仇を、そうとも知らずに些細なきっかけで殺めるかもしれない。
最後のパレードの場面のロケ地は冒頭で子供達が遊んでいた路地から目と鼻の先のようだ。みんな自分を守るために必死だが、それもこれもちっぽけな町の中の出来事にすぎず、それら全てを包含するようにいくつかの死体を飲み込んだ川は今日も流れていくのである。
救いはないが、そんな感傷的な物思いに浸らせる力のある映画だった。
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