一人旅

ボウイ&キーチの一人旅のレビュー・感想・評価

ボウイ&キーチ(1974年製作の映画)
5.0
ロバート・アルトマン監督作。

『バード★シット』(1970)、『M★A★S★H』(1970)、『ナッシュビル』(1975)と数々の傑作を世に遺した鬼才:ロバート・アルトマンが、エドワード・アンダーソンによる1937年発表の長編犯罪小説「Thieves Like Us」を映画化したクライムドラマで、同原作はニコラス・レイ監督の大傑作『夜の人々』(1948)として先に映像化されています。

大恐慌時代のアメリカを舞台にした作品で、刑務所を脱獄した終身犯3人組が各地を逃亡しながら銀行強盗を繰り返していく様子とその後の末路を、3人の中で一番若い主人公:ボウイと彼が逃亡先で出逢った若い娘:キーチの破滅的な愛のゆくえを主軸に描き出した“犯罪+悲恋ドラマ”の佳作であります。

ニコラス・レイの『夜の人々』と比べると明白に見劣りする作品ではありますが、逃亡の最中に芽生える男女の危うい愛を刹那的に描き上げた悲哀性に満ちた犯罪ドラマとなっていて、順調に思われた逃亡生活が次第に大規模化する警察包囲網によって破滅の道を突き進んでいく終盤の劇的転調にアメリカンニューシネマ的な風合いを感じさせます。

主演のキース・キャラダインと相手役のシェリー・デュヴァルの決して美男美女ではない“華奢な二人組”が純粋な愛情で固く結ばれる男女を儚く演じていますし、逃亡一味のリーダー格を演じたジョン・シャックの衝動的な立ち回りも真に迫っています。
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