いろどり

ナポレオンのいろどりのレビュー・感想・評価

ナポレオン(1927年製作の映画)
4.0
また一つサイレント映画の名作に出会った。
これぞサイレントの超大作!!

4時間のサイレントはさすがにきついかなと思ったけど、やっぱりきつかった。

ただ今作には魅力的なところがたくさんあった。

少年時代のナポレオン役が目力があり美少年でとても惹きつける。大人になってからのアルベール・デュードネも熱演で、もうナポレオンにしか見えない。私の中のナポレオン像は今後、この人の姿で想像することになりそう。

最も感動したのは、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」誕生の瞬間。

フランス革命の士気を高める革命歌として1795年に生まれたのがラ・マルセイエーズ。

作中では、初披露の大喝采以降、幾度となく流れ、フランスの祖国愛、愛国心を刺激する。フランス人ではない私も、なんだか気持ちが高ぶってくる。自由を求めた民衆の血と涙が詰まったフランス国歌の強い意味を知る。

映像技法についても、素人目にもわかる画期的な処理をしていた。

まず、白黒映画といってもただの白黒映像だけではなくて、青みがかった映像と、赤味がかった映像を、シークエンスによって使い分けて、トリコロールの青白赤を表現している。これのおかげで飽きを感じさせず、4時間を乗り切ることができた。

リズミカルな場面転換の連続や、フィルムにフィルムを重ねた二重の映像、3面の映像を同時に映すなど、アベル・ガンスによる映像技術の発表会のプレゼン資料を見ているかのよう。

残念な点としては、少年時代から着実に出世していく20代のナポレオンが描かれているのに、皇帝になる前で終わってしまう。

こんなに長いのに!

でもオリジナルは12時間にも及んだとのこと(今作はコッポラによる修復バージョン)。

もはや1クールのドラマ。

しかも監督はこれを第一部として、ナポレオンの後半生の第二部を作る予定だったという。予算の関係でとん挫したようだけど、もし作られていたらNHKの大河ドラマくらいのボリュームになっていたかもしれない。

後半には壮大な中だるみがある。

見ているとだんだん、アベル・ガンスは映画の変態としか思えなくなってくるし、見ている自分も変態に思えてくる。

ナポレオンという人物を学べると同時に、映画というコンテンツが生まれて間もない黎明期にこんなチャレンジャーがいたと知ることができた。

また一つ、映画史をたずね、新しき発見を得た。
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