囚人13号

ナポレオンの囚人13号のレビュー・感想・評価

ナポレオン(1927年製作の映画)
5.0
映画技法の極地探検。未だコッポラの編集版しか観ていないことを恥入りつつ、トリプルエクランとラ・マルセイエーズの二重奏を大画面で拝む機会(80年代リバイバル)に恵まれていた方をこの上なく羨ましく思う。
ガンスはモンタージュのみならずクレーンショットから雪合戦/パーティーの手持ち主観などカメラの機械性までも解放し、印象派絵画へのアプローチによってマラーの死を134年振りに蘇らせた。無声映画史において『ナポレオン』を『戦艦ポチョムキン』『サンライズ』と同時に評価することはある意味正しいが、撮影で言うなら本作は頭一つ分傑出している(編集の中でのカメラの重要性を主張しているという点において)。
そしてあまり認知されていない事柄を指摘しておくと、ガンスのモンタージュは『鉄路の白薔薇』のフラッシュバックが最も広く認知されているだろうが実は本作にも多用されており、特にラストの強烈なそれは先述の二重奏にも増してナポレオンの神格化に絶大な効力を発揮している。仮にガンスがプロパガンダを撮っていたらばエイゼンシュテインやリーフェンシュタール以上のとんでもないものを残していたに違いないぜ
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