極限状態での人肉食というショッキングなテーマを扱っているわりには肉の処理や食べる描写があっさりしすぎているのが拍子抜けするし、緊張感も薄いので今一つ盛り上がらない。人の肉を食べて生き抜いた三國連太郎をめぐる後半の裁判はふてぶてしく飄々とした三國の演技で最後まで楽しめるけど、演技がくどいので原作のテーマが薄まっている。何より熊井啓監督の演出が舞台をそのまま映画にした感じになっているのが映画としての面白さを欠いた印象に。
前半での周囲が氷に閉ざされた三國、奥田瑛二、田中邦衛、杉本哲太の軽妙ななかに食べ物がない悲痛な状況を感じさせるやりとりがピークだったかな。