EDDIE

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまでのEDDIEのレビュー・感想・評価

4.4
傍から見れば幸せな家庭。しかし実情は異なる。常に閉塞感に苛まれる夫婦のすれ違い。憧れと自由を追い求め空虚な日々を過ごす妻と生き甲斐とは呼べない仕事の毎日を送る夫。2人の生活はいつから破綻を迎えたのか…。

いやぁこれはとんでもない作品ですね。
ハリーポッター強化週間で3日連続ファンタジーだったので、趣向を変えてより日常的な作品をと思い観たのがこちら。
レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが『タイタニック』以来の共演を果たし、共演のキャシー・ベイツも同様に『タイタニック』出演仲間。
そしてサム・メンデス監督とロジャー・ディーキンス撮影監督の『1917』コンビという縁に恵まれたような作品。サム・メンデスとケイト・ウィンスレットは当時夫婦でもありましたね(2010年に離婚)。

製作陣や出演者が縁で結ばれたような作品ではありますが、作品自体は人の縁というものに疑念を持たざるを得ない内容。とにかく鑑賞後の余韻と居た堪れない気持ちが満載で、決して“楽しい”作品ではありませんが、とてつもなく“心に染み入る”作品でした。
私自身サム・メンデスとロジャー・ディーキンスというコンビに絶大なる信頼を寄せているんですが、本作は映像から人間の真理をエグい形で見せつけてきます。『1917』のように派手な作品ではありませんが、一見幸せそうな家族でも内面までは見えない人々の裏側を類い稀なる撮影手法と演出で実に心に突き刺さってきます。

ディカプリオ演じるフランク・ウィーラーとウィンスレット演じるエイプリル・ウィーラーは、美男美女のカップルで“レボリューショナリーロード”と呼ばれる誰もが羨むような庭付き一軒家で暮らし、夫は都会の大企業で勤務して、リゾート地への小旅行に当たり前のように出掛けていく理想の夫婦。家を紹介した不動産屋のヘレンも2人は出会った時から他の人たちとは違ったと言います。

1950年代のアメリカを舞台にしているようですが、この得体の知れない“隣の芝生”の映し出し方は現代にも通ずるところがあるなと。近所付き合いも昔に比べたら希薄な今、近所の家庭の情報は噂話や見た目からの想像でしか得ることができません。どんなにテクノロジーが発展しても、人付き合いというのはデジタルではなかなか発展させづらいのです。
本作は本質としては夫婦のすれ違いを、互いが愛し合っていようとも少しの意見のすれ違い、綻びだけですべてが壊れてしまうという教訓的なメッセージを放っていますが、もう一つの本質として人は大して他人の評価に対する言葉の責任を持たないということです。
特に後者については秀逸なラストシーンがすべてを物語っており、個人的には印象的なラストシーンの一つとして私の記憶に深く刻まれました(あの演出は巧すぎる!)。
さらにその掌を返すような他人の評価を、キャシー・ベイツがこの人頭おかしいんじゃないかというぐらいに体現していてお見事というしかありません。

ゴールデングローブ賞ドラマ部門の主演女優賞に輝いたケイト・ウィンスレットも体当たりな演技がとても印象的でしたが、これを当時の夫が監督として演出しているってのがもう狂っているなと。
また夫婦2人にとってかなり重要な要素となるのが子供の存在ですね。フランクとエイプリルには2人の子供がいます。そして、エイプリルはフランクとのすれ違いの結果とんでもない結末を迎えてしまいます。その後の公園で子供たちが遊んでいるのをボーッと眺めているフランクの姿がまたこれまでの作品に起こった出来事を考えると平常心で観ることができません。

幸せな家庭を築くこと。簡単なようで簡単ではない。運命なんて軽々しい言葉で、人の人生を背負うことの重さをイヤでも痛感する傑作です。

※2020年自宅鑑賞252本目
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