半兵衛

ガメラ対大悪獣ギロンの半兵衛のレビュー・感想・評価

ガメラ対大悪獣ギロン(1969年製作の映画)
3.0
1968年頃からヒッピームーブメントやパリ五月革命の余波を受けて映画にも常識にとらわれないアナーキーな風潮が押し寄せてくるが、その波に敏感に反応したような印象を受けるのが本作。表向きは子供たちのピンチをガメラが助けるという通常スタイルのガメラ作品ではあるが、チープ過ぎる宇宙船のセットや惑星の美術、コスプレみたいな女性宇宙人、包丁が怪獣になってしまった格好のギロンと世界観がぶっ飛んでしまった結果、時代の空気感と低予算の開き直りがない交ぜになった変な作品になってしまっている。きっと50年後もこの時代の波と映画界の変貌の狭間で揺れ動くこの作品を珍味として楽しんでいるのではないか。

ガメラとギロンの対決シーンが四つ組になって戦うというよりなぜかいちいち宙を飛んで攻撃するのが多いのも珍味の味わいを一層かもしだす。でもどんなに傷ついても子供のために戦うガメラの信義と献身ぶりはぶれていないのでシリーズとしての醍醐味は楽しめる。

本作の舞台となる惑星テラはコンピューターによる管理社会と気象をコントロールする超科学でユートピアを築こうとするが、コンピューターの不調により気象が変化して行き着く果てが怪物(ギャオスやギロン)だらけの地獄というオチがなかなかシニカル。でも子供にはそんな鋭い批判はわかりづらいと思う。

若かりし頃のイーデス・ハンソンや大村昆が出演しているのも見所、ちゃんと眼鏡もずり落ちます。
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