もとまち

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリストのもとまちのレビュー・感想・評価

3.9
悪徳警部補ハーヴェイ・カイテルが破滅外道をまっしぐら。息子たちを車で送ったらすぐさまコカインを吸引。事件の捜査そっちのけで野球賭博に金をつぎ込み、賭けたチームが負ければ拳銃でカーラジオをぶっ飛ばす。暇さえあればチンピラからドラッグを買い小銭をせびり、不良少女には職権乱用でねちっこくセクハラ。警官としての職務を微塵も果たさないカスっぷりは清々しいほどである。
しかし、そんなどうしようもない男が人生の「贖罪」を果たそうとする終盤の展開には胸を打たれるものがある。物語は当然ながら無情な結末を迎えるが、最後に主人公が二人の青年に対して見せた「赦し」に、ほんの僅かな救いがあるのかもしれない。
突如降臨したジーザス・クライスト(幻覚)に涙ながらに許しを請い、己の罪への後悔を吐露するシーンも印象的。ハーヴェイ・カイテルの演技がとにかく素晴らしいのだ。顔をくしゃくしゃにして泣いたりするところに、得も言わぬ哀愁がある。
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