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素晴らしき日曜日のSIのレビュー・感想・評価

素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)
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2022.4.19
自宅TVにて鑑賞

終戦直後。素寒貧の若いカップルは、なんとか日曜を楽しく過ごそうとする。子供との野球や動物園で気を紛らわすも、家の内覧、高級キャバレー、日比谷公会堂では金欠故にみじめな思いをし、男は下宿先で女の体を求め険悪なムードに。二人は仲直りをし、喫茶店では金が足りずまたもみじめに思うが、将来に思いを馳せご機嫌に。男は無人の野音で指揮を始め、二人は空想のオーケストラに酔いしれる。

黒澤明。グリフィスの「素晴らしい哉人生」を参考にしたとのこと。黒澤明は本当に当時のハリウッドを良く観ている。画にその感じが出ている。

貧乏くさい脚本。抜群の時代性があったと予想する。将来への希望と想像力があれば、貧乏でも元気に生きていける。翻って現代はどうか。この国には結局、希望も想像力も残らなかった。
構成としてはシンプル。
シューベルトの「未完成交響曲」をモチーフにしているのが上手い。テーマに沿っている。
ラスト、野音で第四の壁を破壊する。
「皆さん、お願いです。どうか拍手をしてやって下さい。世の中にはあたしたちみたいに貧乏な恋人がたくさんいます。そういう人たちのために、どうかみなさんで拍手を送ってください……」
強烈。ただ、当時の映画館でも、実際に拍手はほとんど起きなかったようだ。このあたりも黒澤明が、海外仕込みで少し日本人とずれていることが良く分かる。

冒頭から、これでもかと後ろでエキストラを歩かせる。背景を動かし続けようという、このこだわり。
遮断器のない踏切。当時の東京はこんな感じだったのか。資金の影響でほぼロケであり、記録映画としても秀逸である。
道端での子供たちとの野球。牛や車が横切りまるでデリーのよう。これもロケ。
廃墟でのパントマイム。何もモノがない時代を、正面から映した。

ヒロインは中北千枝子。ゴジラを生み出した東宝プロデューサー田中友幸の妻とのこと。こういうがっしりした女性がタイプなのか。
瞬きの回数やタイミングなど、考え尽くされた演技が印象的だった。

シンプルなので眠くなりますが、良い映画です。
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