素晴らしき日曜日の作品情報・感想・評価

「素晴らしき日曜日」に投稿された感想・評価

巡りめぐって日曜日!

戦後間もない東京を舞台に、金無しカップルの日曜デートを描いた黒澤明の隠れた傑作『素晴らしき日曜日』
(ちなみに4月1日は黒澤映画の常連俳優・三船敏郎のお誕生日!)

"世界のクロサワ"を冠するメインストリーム作品とは少々距離感があるかも知れませんが、
敗戦を迎え疲弊した日本の姿に対し、夢と希望を託された男女の人間賛歌が観る者に至高の感動をもたらしてくれる本作。

公開されたのは1947年7月ということで、
終戦から2年も経過していない本作にはまだまだ生々しい戦争の余韻が漂います。

復員し悲観的に現実社会を見つめる男と、何事も明るく楽天的に未来を夢見る女。

二人合わせて35円(今でいう3,500円)の所持金で当てもなくブラブラと街を彷徨い、
彼らはさもしくも世知辛い戦後日本の現実を次々と目の当たりにしていきます。

しかし終盤で二人が繰り広げるパントマイムから徐々に我々の心を打ち、逆境から夢想的な希望を創造する演出では底知れぬ歓喜がスクリーンを覆い尽くすのです。
また本作は素直に心から拍手できるか、できないかで大きく印象も変わってくるものかと。

本作で使用される楽曲も実に多彩であり、
シューベルト『未完成交響曲』や『楽興の時』といったクラシックから、童謡『きらきら星』や流行歌『りんごの唄』までを適材適所に配置しています。

一週間通してきた曜日シリーズも一旦ここで終了。

今日からいよいよ新年度が始まり心機一転!
不安と希望を胸に、新たな環境に身を置く方も多いのではないでしょうか?

真新しいスーツや制服に袖を通す方も、花見や行楽に出かける方も、ファーストdayで新作映画をハシゴする方も、仕事や準備に追われている方も、三月決算から解放され家でのんびりする方も、
どうぞ各々にとっての素晴らしき日曜日をお過ごしくださいませ。
とある日曜日。たった一日のデート風景だけで描かれた映画

ネガテイブで現状の閉塞感から明るい未来が描けない彼氏と、ポジティブで明るく前向きな彼女。

時代背景は終戦直後の貧しさや、真面目で正直なだけでは生き抜けない厳しさなども絡んで今とは全然違うけど、この彼氏が抱えてる閉塞感や、未来に希望が持ちづらいという気持ちは現代でも同じなのかも。

それでも「大切なパートナーとなら夢は描ける!」そんなシンプルな内容がここまで心に響くとは…

野外コンサートのシーンでは、彼氏くじけるの早い。もっとがんばって!
とか思ってたらまさかの観客への呼びかけ。
こんなん拍手しちゃうよ。

男はいつの時代も甘えてるというか、女性に尻を叩いてもらったり、励ましてもらわないとダメなんだなぁ〜
日曜日に、ひとりぼっちで観ました。

小作品で、諸事情ながら低予算。無名俳優の出演。でもそんなのは関係ない。
いちいちこの日曜日の一日に、気持ちを振り上げては下がるの繰り返し。
しかし、物語が進むにつれ陰影は深くなる、二人が街を歩けば歩くほど、戦争の残した現実はカメラに映る。

その中で、「想像力」の物語が現実を凌駕する。存在しないものを存在してるように見せること、つまり、映画、という表現をある種のメタ構造的に見せている。
そして、それはこれを観ている観客に拍手を促すことで最高潮に達している。


サラッと描いているようで実は男と女の切実な性の問題もドラマに組み込み抜群のニュアンスで表現している。
実に血と肉の塊のようなファンタジー作品。
Noriko

Norikoの感想・評価

3.2
戦後の落ちきった雰囲気の中で生きる貧困層のカップルを描いたとにかく美しい作品だった。
この美しさに魅了されるのは私たちが豊かな生活を送ってしまっているからだろうか。
小さな幸せ、大きな幸せ、人それぞれ幸せの形は違っても幸せを求めるからどんなに辛くても生きてられる気がしました。

ネガティブな雄造とポジティブな昌子。その関係性がすごく好きです。好きです、なんて伝えなくてもお互いがお互いのことを今の環境から理解し尽くしている。もしかしたら今はお互いの理解が足りてないから不安になるかもしれないですね。

カメラワークも非常に魅力的。
私は家をみているときと踏切のカットがお気に入りです。大衆の中にいる二人のカットと、二人の世界の中にいる二人のカットの対比が素敵です。

作品をみていてとても思ったのは、やっぱり男女の関係や幸せの形、それぞれの環境は時代を越えて変わってきている、でも今も昔も相手を思う心があることにすごく救われたということです。ゆっくりもう1回みたい。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

3.5
「素晴らしき日曜日」
これは凄い好きな黒澤映画の一つで敗戦直後の東京で貧困に苦しむ若い恋人同士を実験的に描いた作品でこんな敗戦後の日本で日常のささやかな出来事を優しく美しく描いているのは流石黒澤と言える…あの野外音楽堂に流れる未完成交響曲のラストシーンなど胸が詰まる美しい映画だ。
みそ

みその感想・評価

4.1
アンビリバボーで紹介されていた映画。
黒澤明と脚本の植草さんが幼馴染で、学級委員長と副委員長をつとめて、いい関係ができたらしい。
その二人の才能と相性を見出したのが美術の先生
最初黒澤明は変わり者変人扱いを受けていたようで、黒澤明のツバで描いたという絵を見て感動したらしく
その先生のおかげで、黒澤明はいじめられっこを抜け出し、自信をつけていったとのこと

この映画は初めて黒澤明と植草さんがタッグを組んだ作品らしい。美術の先生はこれを劇場で見て涙が止まらなかったそう


素晴らしき脚本でしみた。
好きなセリフがたくさんあった。

特に最後のほうの荒地で夢の喫茶店をかたるシーンが好きだった。
ほほえましい!あんな恋愛したい。
空っぽの劇場で指揮するシーンは、個性的で忘れられなさそう

動物園の、俺たちが見てるんじゃなくて、俺たちが見られてるみたいな気がする。人間はかわいそうだなんて顔してる。
ってシーンが、なんともいえん。
戦後の憂鬱さもありつつ明るく生活しようとしてる感じが、なんとなく伝わる。戦後を間も無くを生きていないのでわからないが。。
でも、戦後の過酷さを押し付けるような感じの映画ではないことはわかる。

マイナス思考の主人公とプラス思考の彼女がとてもよい。
後半その思考が逆転するのが面白い。
彼女が悲しそうにしていると、彼が明るくなろうと前向きになって頑張っているのが微笑ましい。

なんか、恋人あるあるなのかわからないけど、映画内のシーンは身近に感じた。
デートをしては一喜一憂する感じがこういうことあるなって思って
主人公の男性を見て自分を見てるようだった。笑
戦後の映画で、時代が時代だけに感じ方も違うかと思いきや、割といつの時代も変わらないのだなぁ。

彼女役の中北さん、めちゃくちゃ美人というわけではないのに、声も綺麗で品があってすてき
takakage

takakageの感想・評価

3.8
闇商売渦巻く戦後日本で不器用に生きる男とそれを支える明るく健気な女。物質的に豊かになった今の時代でも、男特有の焦燥感は不変的なもの。とりあえず、こんな子を嫁さんにしたいなと思いましたね。まだ黒澤映画3作目ですが、抑揚が効いててほんとに終始ダレないですね。ヒロインが映画を観てる人に問いかけるシーンは日本映画史に残る名シーンやと思います。

俺たちゃスカンピンなんだぜ
こーゆー世の中だからこそ余計に夢が欲しいのよ。夢がなきゃ生きてけないわ、苦しくって
君だけなんだぜ、僕に残ってるものは
今はどこ行ったって豚みたいなやつばっかだ。闇太りだ
こいつも憂鬱そうな顔してらぁ。あなたが憂鬱なのよ
あんたはいっつも現在だけなのね。未来のことを明るく考えてみようとちっともしないのね
世の中の冷たい風にいつも凍えていなければならない貧しい恋人たちのために、どうか皆様の温かいお心で声援を送ってください。私たちに美しい夢が描けるようにしてください
茶一郎

茶一郎の感想・評価

3.9
 黒澤明監督の戦後四部作の内、最初の一本。今作『素晴らしき日曜日』は、ある日曜日を二月の東京で過ごす貧しいカップル・雄造と昌子のやり取りを描きながら、同時に戦後間もない日本の悲痛な現実を映し、その現実で生きる日本人の希望を描く作品になります。

 今作の製作当時、GHQによる戦後日本の民主化推進のため各企業に労働組合が配置され、加えて共産党員がそのリーダーになりました。もちろん映画会社もその影響を受け、黒澤監督が関与していた東宝は労働組合の闘争により映画製作を続けることができなくなった。その抗争は、組合に対抗するためスターを引き抜いた「新東宝」と、残った「東宝」との争いに発展し……というのが、いわゆる「東宝争議」。
 その中で黒澤監督含めた「東宝」はスター主義の「新東宝」に負けじと、何と一人で三作品の脚本を書くという英雄っぷり。結果的に監督主義の「東宝」が批評的に大勝利を収めたという結末は、ご存知の通りであります。
 そのような東宝争議の最中に製作された今作『素晴らしき日曜日』は、戦後一作目として黒澤監督が撮った『わが青春に悔いなし』のような戦中を回顧する作品とは異なり、荒れ果てた戦後の大地をもう一度見据え、未来の希望を想像しようという作品であり、戦後四部作は同様のモチーフが続くことになります。
 同時期に日本と同じく敗戦国であるイタリアの映画界でネオリアリズム作品が登場しますが、今作も同じく戦後焦土と化した自国を生々しくフィルムに焼きつけるという映画行為が、今作と重なるようにも思います。

 さて『素晴らしき日曜日』、その物語は休暇の日曜日を僅か35円(当時の貨幣価値)で過ごそうとするカップルの貧乏デートをコミカルに描くものが軸になります。
 特にカップルの男・雄造が「復員軍人」であるという設定は、同じく戦後四部作の『静かなる決闘』の藤崎、『野良犬』の村上と重なるものでありました。
 
 貧乏カップルらしく到底手が届かないモデルハウスを見て回ったり、と『(365)日のサマー』を想起させる微笑ましさが溢れますが、特筆すべきはクライマックス、「未完成交響曲」についての伝説的な二人だけの演奏会のシーンです。
 ここでは、いわゆる「第四の壁」を破るという『アニーホール』、『フェリスはある朝突然に』、最近では『デッドプール』同様の突飛な演出が施されています。驚くべきプリキュアシリーズの劇場版と同じ演出、黒澤監督は映画のライブ性を活かし観客に拍手を求めるのです。
 映画の中の登場人物と同じく、現実の戦後の焼け野原を見た観客は否応なく共感し、同時に観客同士でお互いを応援するような構図、ラストは凄まじく美しいものです。

 今作は、登場人物たちが想像力と夢とで持って悲痛な現実を打ち負かす様子を映しました。何より、これこそ想像力と夢で作られている「映画」の真の役割を表しているように思います。
だりあ

だりあの感想・評価

3.5
黒澤監督の戦後2作目。

この時代の作品全般に言える事だが、
当時の風景が映像として残っていることに
大きな意義を感じる。
この頃から存在するダフ屋、外出しても
何も出来ない生活水準などの生々しさに
加え、本来無音の場所で流れるBGM、
観客に呼びかけるラストシーンの演出、
印象深い要素が多くある。

黒澤映画の黄金期前夜という趣きもあり、
脂が乗ってくる高揚感を感じる作品。
タマル

タマルの感想・評価

5.0
貧乏すぎるカップルのお話。

女性側はロマンチックに過ごしたいけど、戦後の貧しさがそれを許さず。

男性側はエッチしたいけど、女性側の当時の貞操観念がそれを許さず。

何もできないし、何もしないけど、それでも素晴らしい日曜日。
苦しみを分かち合える人がいてくれるから。

この映画が製作される2年前は戦争真っ最中で、そんなつまらない(映画は面白いけど)デートする自由さえなかったのだなぁ、と思うと非常に感慨深いものがあります。

ドラマもなく、地味な映画ですが、観終わった後は主人公の男のように外に出て深呼吸したくなること必至の名画です!!
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