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リプリーのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

リプリー(1999年製作の映画)
4.3
February 18th

Anthony Minghella監督作品。
Walter Murch編集作品。
Matt Damon主演作品。

やっぱこの製作陣大好きだわ。Anthony Minghella脚本。Ann Roth衣装。John Seale撮影監督。Jude Law出演。Walter Murch編集。Gabriel Yared音楽。Anthony Minghella監督。
このメンバーはなんだか、映画を撮るために命削っているぐらい、はやる映画ではなく、価値のある面白い映画を作ろうとしている気がする。だから、それぞれの部門がとても密接にリンクしていて、お互いの良さを引き出すような映画製作が作品から見て取れる。

そして本作に、Matt Damonが参加し、さらに作品の質が高くなっている。サイコロジカルスリラー映画となっているが、サスペンス作品として最高の作りをしていると思う。

ストーリーは、前半の導入から、Ripleyがどういう人物なのかというところをあまり説明せずに、物語がスタートする。説明するといえば、最初のボイスオーバーのセリフぐらい。これにより、映画を見進めていくときに、この人物はどういう人物なのか、なぜこのような行動をしたのか。という部分を視聴者が考えなければいけないような作りになっている。サスペンス要素として、むしろ映画として欠けてはいけない要素である。
さらに、Anthoney Minghella監督作品ではあるあるだが、登場人物がかなり多い。Ripleyが新しい人物と出会う時に、この人は物語で重要なのかどうか、視聴者は判断しなくてはならず、どこで視聴者の注意を引くのかというのがかなり難しくなってしまう。もしそれに失敗してしまうと、だらだらとした作品になり、クライマックスのシーンで盛り上がりきれずに終わってしまう。この作品で、そこを担当したのが、編集Walter Murch。彼は、編集技師という役割ではなく、ストーリーテラーとしての役割を担える編集者である。大きなシークエンスとして、各シーンの長さをしっかりと考えながら、そのシーンの中で何が重要で何が重要じゃないのかを確実に捉えながら、1フレーム単位で編集していく。そのための工夫は数知れず、かなりユニークで他の人からすると、バカなんじゃないの?と思われるところも多いとか。それでも、この作品を見ればわかるように、クライマックスで、登場人物の歯車が同時に外れるところはかなり衝撃的で、クライマックスとして申し分ない。さらに、彼のすごいところは、カットのキューだと思う。普通のシーンでのカットは当然のことながらスムーズで、シーンの変わり目のカットで、めちゃめちゃオシャレなことをたくさんしている。ルールを確実に意識しながら、Walter Murchは必ず視聴者であることを忘れない。自分が一視聴者としてそのシーンを見たときに、どう感じるのかということを、何度も何度も感じ取って編集している。だから、彼が感じたものの多くを視聴者が感じ、映画を通しての雰囲気とか、リズムとかが明確。さらに彼は音にも携わっているから、もうその関係性も見逃せない。
その編集と密な関係を持つのが、撮影。John Yaredの撮影は特徴的で、いまの映画の流行を作った一人といっても過言ではない。ECUが各所で出てくるのだが、それぞれのショットに意味があり、リズムを作っているのは彼も同じだ。
サスペンス映画として、大きな波をもちながら、各シーンでもサスペンスが繰り広げられ、それがまた関係してくるし、Ripleyの人格を視聴者が理解していき、Ripley自身も自分がなんなのかを探していく。だからこそ、このエンディングで正解。もうすべてが関係していて、いろんな解釈できるのだが、混乱することはない。

もう、言い出したらきりがないのかも知れないが、それほど、多くの映画的要素が詰め込まれた、映画として完成度の高い作品である。
それに応えるように、役者陣もとてもいいし、衣装やセットも統一性があり、小さなこだわりもある。

相変わらずPanaflexは好き。Avidでこれしたのはほんとすごい。
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