ぶみ

ニューヨーク東8番街の奇跡のぶみのレビュー・感想・評価

3.0
ニューヨークに奇跡が起こる!

マシュー・ロビンス監督、ジェシカ・タンディ、ヒューム・クローニン等の共演によるSFコメディ。
再開発により立ち退きを迫られた古いアパートの住人が、突如現れたUFOに助けられる姿を描く。
立ち退きを迫られているダイナーの店主フランクをクローニン、認知症を患っているフランクの妻フェイをタンディ、同じくアパートの住人で元ボクサーのハリーをフランク・マクレー、恋人の帰りを待つ妊婦のマリサをエリザベス・ペーニャ、売れない画家をデニス・ボウトシカリス、彼らに対して立ち退きを迫るチンピラをマイケル・カーマインが演じているほか、ジョン・パンコウ、マイケル・グリーン等が登場。
物語は、ニューヨークの東8番街で、フランクが経営するダイナーが全盛期だった頃のモノクロ映像でスタート、そこから画像が色づくと同時に、再開発のため、ダイナーの周囲を走り回るブルドーザーの轟音が響き渡るという、台詞はなくとも、ある程度の状況を感じ取ることができる演出がなかなか秀逸。
以降、チンピラに立ち退きを迫られるフランクが、もはや神頼みとなったところに、謎のUFOが登場し、フランク等を助けていく展開となるのだが、このUFOが番いであり、はたまたこどもが誕生したりと、無機質な外観でありながら、その動きや仕草は、何とも愛らしいものであるとともに、軽妙なやりとりは、まるで往年のドリフのコントかのよう。
何より、CG夜明け前とも言える80年代後半の映像は、流石にビルの屋上のシーンにおける背景のハリボテ感は致し方ないものの、UFOそのものを特撮でとったであろう多くのシーンは、CGやVFX全盛の現代にはない、臨場感と味のある雰囲気が味わえるものとなっている。
また、『*batteries not included』=『電池は含まれていません』と、あたかも製品の注釈のような劇中の台詞をタイトルとした原題も面白いもの。
全体的には軽妙なコメディテイストとなってはいるが、再開発による立ち退きに始まり、上と下から板挟みのチンピラや、認知症の妻、ひとり親になってしまうであろう妊婦と、結末のその先を深読みすると、純粋なハッピーエンドとは言い難く、社会の構図を凝縮させたような一作。

奇跡は理由や目的を探り出すと、消えてしまうんだ。
ぶみ

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