櫻イミト

真実の櫻イミトのレビュー・感想・評価

真実(1960年製作の映画)
3.5
※是枝監督の「真実」(2019)と間違えてレビューしてる人が多いので注意。

「恐怖の報酬」(1953)「悪魔のような女」(1955)のアンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督が、主演ブリジット・バルドーにあて書きして撮った問題作。本作公開直後にバルドーは自殺未遂。クルーゾー監督の妻ヴェラ・クルーゾーは心臓発作で急死した(自殺説もある)。

法廷では娼婦ドミニク (バルドー)の裁判が開かれていた。彼女は元恋人の指揮者ジベール殺害の罪にとわれている。裁判を通して再現される事件に至った経緯。愛の真実とは何か?。。。

悪女ではないが怠惰で男に奔放なドミニクが音楽エリートの男に惚れる。男の方は官能的な女に一目惚れする。そうして結ばれた二人だが、結局は水が合わない。この現実でもありそうな愛と性のズレを描き出していて、演ずるバルドーは元々のキャラクターに加え、あて書きされただけに非常に説得力があった。というか、本作の現場ではバルドーと相手役サミー・フレイの恋愛関係、バルドーとクルーゾー監督の不倫スキャンダルが取り沙汰され、そのあげくに実際に悲劇が起きている。ある意味、迫真の一本と言えるだろう。

クルーゾー監督は似ているテーマを「情婦マノン」(1948)でも手掛けている。同作はラストシーンのインパクトによって広く知られているが、映画としては本作の方が完成度が高いと思う。
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