もとまち

ショック集団のもとまちのレビュー・感想・評価

ショック集団(1963年製作の映画)
3.7
混沌とした編集と音響。シンメトリックな「ショックの廊下」。唐突に暴発する患者たちの狂気。当時のアメリカにおける精神病院の異常な実態を、フラーがエネルギッシュな演出力で抉り出した傑作。狂人のフリをしながらも「俺は正常だ」と信じていた主人公が、次第に正気と狂気の境目を見失っていく様が怖い。自分に対する嘘を重ねてしまったら、その内どれが本当の自分であったのかを忘れてしまうのが人間である。気づいた時にはもう遅いのだ。精神病患者たちの口から語られる過去が、戦争や人種差別と根深く関わっている点も印象的で、彼らを介して社会問題を提示しようとするフラーの真面目な姿勢が垣間見える。社会の中で狂わざるを得なかった者もいれば、あえて狂うことを選んだ者もいる。では果たして本当に狂っているものは何なのか...。テーマを語ろうとする真摯さがストーリーの構成に単調さを生んでいることは否めないし、患者が正気に戻るタイミングも都合良過ぎる気がするが、当時の社会派エンタメの中では群を抜いた衝撃作であると思う。いきなりパートカラーで日本の仏像やフジヤマが色鮮やかに出てくるのビビった。
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