似太郎

ショック集団の似太郎のレビュー・感想・評価

ショック集団(1963年製作の映画)
4.5
【せめて囚人らしく】

素晴らしい!ゲテモノ食い、イカモノ食い🦑🐙が好きなぼくとしては最高のエンタメであり不条理スリラーの逸品!

新聞記者が精神病院に潜入捜査して殺人事件の真相を突き止める内容の筈なのに、どんどん主人公がカオスな状況に取り込まれて最後は本当にキ○ガイになってしまうという何とも救われないオチ。

主人公の妄想場面がパートカラーになったり、合成シーンを使用したりすることでより全体の異常性、猟奇性が増す。B級アングラ映画の巨匠サミュエル・フラー監督らしく「辻褄が合わない」或いは「未整合さ」が却って魅力になってしまった好例だと思う。

マーティン・スコセッシがのちにディカプリオ主演で『シャッター・アイランド』としてリメイク(再構築)したミイラ捕りがミイラになる典型的なカルト作品。

伝統的なハリウッド製スリラー映画やフィルムノワールに多々見られる「個人=主体」が「組織=客体」に汲み取られるというパターンを踏襲しつつ、実際は「個人(或いは主人公のペルソナ)」を構成している全要素がそのまま【精神病院】という場所に置換されるアイデアそのものが非凡。

箍の外れた狂気的(神聖)な場で「正常心」「理性」を装っても全くムダであり、ヒトがヒトでなくなるプロセスを皮肉っぽく暴いたこの監督らしいアレゴリズム(諷喩)を感じる。「白人は偉大だ」と唱える黒人や「暴力反対」のアジテーションが院内に轟く非現実的な光景の数々。

ある意味『カッコーの巣の上で』やミシェル・フーコーの著作と全く同じ理論であり「個人がシステムの中に汲み取られる(囚人化する)事で初めて社会が成り立つ」という極めてハイブローなことをB級映画で実践するという点が異常過ぎる。やはりこの監督がジャーナリスト出身という事もあってか、現代批評的な観点から見ても学ぶことが多い作品。

マーティン・スコセッシが【教育者】であるフラーのエッセンスを物にし『タクドラ』『グッドフェローズ』『シャッター・アイランド』等でほとんど同一のアプローチを行なっているとぼくは思う。最終的に「矛盾があるからこそ人間」であるというテーマがこの二人の監督には通底する要素である。😓

善が悪になり、悪が善を覆す。そういった一種の反復を描きたかった映画なんじゃないかな?🤔
似太郎

似太郎