ナンデヤネン

サルバドールの朝のナンデヤネンのレビュー・感想・評価

サルバドールの朝(2006年製作の映画)
3.2
自分がこの作品を見たいと思ったきっかけは、たまたまクライマックスの一場面を動画サイトで見たからであった。ガローテといわれる処刑法。死刑囚の首に鉄輪をはめて背後から締め上げて絶命させる絞首刑の1つで、1978年に死刑制度が廃止されるまでスペインで行われていた。絶命するまでの時間は鉄輪を締める死刑執行人の力加減と死刑囚の体力次第であることもあって、残酷なものであったそうな。この物語が実話であるということで、スペインのフランコ独裁政権下で行われた言論弾圧について歴史の勉強をするつもりで鑑賞した。
サルバドールが逮捕されて弁護士との最初の接見場面。ここでサルバドールが反政府活動に身を投じてから逮捕されるまでの回想が延々と展開される。全体のほぼ半分くらいの尺を使っていてはっきり言って退屈だった。サルバドールがどういった主義主張を持っていたのか政治思想が見えなかったし、活動資金を得るために銀行強盗を繰り返し、挙げ句の果てに警官を撃った。これらの事を以って彼に共感することはできない。ただし、警官殺しの罪については、サルバドールが発射した弾数と被害者が受けた被弾数が一致しないことから、本当に彼が致命傷を与えたのかどうか疑わしい。むしろ同僚刑事が発射した流れ弾が当たった可能性が高いと思われる。もしサルバドールが非暴力の政治活動をしていたら、きっと彼に共感しただろうし、ろくな捜査もせず政治的理由で残虐な刑に処せられたことに憐憫の情を持っただろう。
それと刑務所の看守の心変わりときたら。なぜあんなにサルバドールを敵視していたのに手紙を読んだらころっと変わるのか。人間に心情ってそう簡単に変わる?人間を描けていない。
おそらく監督としてはフランコ独裁政権の言論弾圧を糾弾したい意図があったと思うんだけど、上記の理由から我々を突き動かすほどには至っていない。歴史を学ぶ教材として見る価値はあるだろう。
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