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異人たちとの夏のプレコップのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
4.7
「三丁目の夕日」より血の通った懐かしさ

イギリス版リメイクの公開も迫る山田太一原作×大林宣彦監督の名作。葬られた地下鉄の駅からスタートする異界との奇妙な接触は、12歳で亡くした両親と再び出会い、時を過ごすというノスタルジックな場面で巻き起こる。

図らずも昭和時代の晩年に公開となった本作は郷愁による感動を最大限出しながらも、過去に生きるのではなく現在を肯定する希望のあるエンディングで平成時代に繋げてくれている。

片岡鶴太郎と秋吉久美子が風間杜夫演じる英雄の両親を好演。エノケンをイメージした片岡鶴太郎の口調や仕草は江戸っ子そのものだし、秋吉久美子の母性と無邪気さ、色気のバランスが非常に繊細で惹きつけられる。

演出もかなり好みだったが、中でもすき焼きを秋吉久美子から風間杜夫に手渡すカメラワークに持っていかれた。また、風間杜夫の留守電アナウンスの「トゥルルル」で不覚にも笑ってしまった。

山田太一作品の海外リメイク製作に初めは驚いたが、実際にオリジナルを観てみるとその普遍的な内容はたしかに万国共通で感情を揺さぶられると感じる。リメイク版も楽しみ。


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