てつこてつ

悪魔のシスターのてつこてつのレビュー・感想・評価

悪魔のシスター(1973年製作の映画)
3.6
「ファントム・オブ・パラダイス」に続き、ブライアン・デ・パルマ監督の初期の作品を鑑賞する。

早熟・・というか背伸びをしていた自分が小学生の時に劇場で観た「殺しのドレス」に圧倒され、以降の作品は全部劇場で鑑賞するほど、ヨーロッパ映画ならフェリーニ、アメリカ映画ならデ・パルマ・・というくらいハマっていたが、何故か本作は未鑑賞。

おそらく、時代もあるだろうが、あまりにもC級ホラーっぽいタイトルと、テーマがシャム双生児であることを知って、なかなかレンタルする勇気が出なかったんだろうな。

いざ鑑賞してみて、「デ・パルマがヒッチコックの影響を多分に受けている」とよく言われる所以が一番分かりやすい作品だと思った。特に、「サイコ」と「裏窓」を思い起こすシーンが多々登場する。

シャム双生児の姉妹の一人が、もう一人と会話するシーン、ショッキングな殺人シーンを犯人と被害者の影で表現するシーン、ヒロインが怪しい隣人の様子を双眼鏡越しに監視するシーン、ど派手な音楽の使い方などなど・・。

ストーリー序盤で起こるアパートでの殺人事件。その部屋を見下ろす位置にある本作のヒロインでもあるジャーナリストが、被害者が絶命する様を窓越しに目撃するところから、なんと10分間にも及ぶ二分割画面での描写が延々と続き、片方では目撃者が警察に連絡し刑事が到着して事情報告をする様、もう片方では殺人があったアパートで死体を隠し血痕などの証拠隠滅を図る様が並行して描かれるので、デ・パルマ作品の中でも、二分割画面が最も効果的に使用されている。

「殺しのドレス」とは異なり、本作では殺人の犯人は冒頭で明白となるので、ストーリーはヒロインが探偵を雇い、殺人の証拠や死体の在処など事件の真相を追究する様子を追っていく。

クライマックスの精神病院のシークエンスは、デ・パルマファンなら一見の価値有り。最後のオチはイマイチだと思うが、もう一捻り見せようかというデ・パルマ監督ならではの遊び心だと思えば納得が行く。

タイトルやジャケ写のイメージとは違い、サイコサスペンスのジャンルに入るので、ホラーが苦手な方でも、それこそヒッチコックの「サイコ」くらいの描写ならOKという方にもお勧めできる。

にしても、こんなクセが強い役どころを演じたマーゴット・ギダーが、本作の数年後にはクリストファー・リーヴ主演版の「スーパーマン」のヒロインに抜擢されるとは、その当時は誰も思わなかったに違いない。
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