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恋愛日記のkazzのレビュー・感想・評価

恋愛日記(1977年製作の映画)
5.0
なんと面白い人物像。

本当に一冊の本のような物語。観ていて気持ちがいい。
同僚に誘われても仕事が終わればさっさと帰る様が、彼という人格を豊かに描き出している。彼にとっての「生きる」は女性を欲することなのだと。

出版社の男たちが彼の「恋愛日記」を退けたいと思う気持ちは、よくわかる。悔しいのだ。男なら誰しも多くの女性を、あるいは女性という違う肉体を持った人間を知りたいと思うものだ。

1966年公開の「アルフィー」も女性をとっかえひっかえする男が主役だったが、この物語の主人公ベルトランはアルフィーとは全く対象的な好人物だった。

棺を囲む女性たちの姿からもわかるように、彼は一人ひとりとちゃんと恋をし、愛していた。もはや病的だが、それでもこういう人間は世の中に絶対いるな、と思わせてくれた。
不安気な表情やアルフィーほど二枚目でないことがより一層好感度と信憑性を人物に与えている。

もうその実在感に触れただけでひとりの人間の人生に触れた気がして気持ちがよかった。
とっても面白い人生だった。
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