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THE FIRST SLAM DUNKのkazzのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
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スラムダンクが好きでよかった。

一瞬の間に複数の動きが同時に発生するセットプレイは、NBAの試合を見ていても一瞬すぎて見過ごしてしまう。そんな複雑な動きを、まさかスラムダンクの映画化が世界中のバスケ映画を差し置いて最初に滑らかに描いてしまうなんて…井上さんの志の高さを痛感した。カットを割ればなんでもできてしまう実写よりも、ゴリのスクリーンでマークマンを剥がして放ったスリーの方がずっと本物のシュートに見えた。
一方、圧倒的な動きの滑らかさに時より表情が追いついていない瞬間もあったが、それを差し引いても余りある美しさだった。

映画は時間表現で、漫画の中では止めて(喋ったり、頭の中の独り言)描けるが、試合は止まらないし映像も流れていく。井上さんはそれを踏まえて、省略したり、タイミングを見計らって描いていた。映画の理解度の高さに感動した。

映画はドラマだ。最初と最後に何かを変化させなければならない。本作を観に来る人の多くは、何が起き、何が変わるかわかって観に来ているはず。しかし、幕を開けた物語は知らなかった一面にフォーカスが当たっていた。まさか主人公を変える、なんて選択肢を選ぶなんて、驚きを通り越して嬉しくなった。
痛みを抱えて、それを糧に成長していたなんて知らなかった。誰もがそうであるように彼もそうだった。カッコいいからそうしているのではなく、そこにはそうしている経緯と理由があった。

この世界のどこかに今日も彼らは生きている、そんな気がしてならない。

夢物語じゃない。今日もNBAの舞台に日本人が立っている。20年前、そんなレベルに日本のバスケが到達するなんて微塵も思ってなかった。スラムダンクが与えた影響は計り知れない。多大なる影響が今の日本バスケ界の礎になっている。あの頃は、NBAは夢物語だった。2022年、夢が現実になった。花道と流川のハイタッチにそっくりな、KD(人類最強のバスケ選手)とワタナビのそれを見た時ぼくは本当に号泣した。スラムダンク、ありがとう。バスケが好きでよかった。
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