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プレイス・イン・ザ・ハートのsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

 もう30年以上も前の作品。時代設定は、20世紀前半の大恐慌時代。保安官が、黒人少年の誤射ともいえる発砲により命を落としてしまう。残された保安官の妻と二人の子供が逞しく生きていく様子を綴った物語。黒人が差別されることが普通の世の中、女性が一人で家族を養っていく様子などが描かれています。監督は『クレイマー、クレイマー』のロバート・ベントン。

 『ミセス・ダウト』のサリー・フィールドが、夫を亡くして未亡人になるエドナの役。夫を殺してしまった黒人の少年が車に引きずられ、木に吊るされる様子は残酷でした。エドナは夫を失ったにも関わらず、黒人に対して怒りを感じている様子がない点が良かった。自宅のローンを支払うために、流れ者の黒人モーゼスを雇い、綿花を育てることにするのです。

 『リーサル・ウェポン』シリーズのダニー・グローヴァーがモーゼス役です。エドナは、自宅のシルバー類を盗まれたのに、モーゼスを許して匿ってあげます。彼女の優しさに安堵感覚えました。子供二人を抱え、生きていくために仕方ないのも事実です。切迫した経済状況が原動力となり、モーゼスを雇う決心をするところ、人種間の隔たりを超えて助け合えてよかったなと思います。モーゼスは恩を返すように、テキパキと綿花畑を作り、エドナを助けてくれます。ここで、綿花を摘むということが地道な作業で、手を切ったり、腰が痛くなったり、大変な作業だということがよく分かりました。炎天下のもと、時間のかかる作業です。

 生計を立てるため、モーゼスの他にも目の不自由なウィルを引き取り、食事を出して、下宿代をもらいます。このウイル役を『二十日鼠と人間』『マルコヴィッチの穴』などのジョン・マルコヴィッチが演じています。目が見えない分、音にはとても敏感で、KKKの襲撃を察知したり、子供たちを嵐から救ったりしてくれます。下宿に来た当初は怒りっぽかったけれど、最後にはお料理を作ってくれたりして、心が通いあう様子が良かったです。

また、若き日のエド・ハリスも出ていました。エド・ハリスの浮気相手の女優さん、どこかで見たことがあり、若すぎてなかなか判別できず。『ストリート・オブ・ファイヤー』『フィールド・オブ・ドリームス』のエイミー・マディガンでした。二人の若い頃の様子を観れたのは良かったけれど、このエピソードは映画に必要がないように思いました。

 夫を失くしたエドナは何もできくて途方に暮れているのに、モーゼスは綿花畑を作ってお金を稼ぐ術を知っていました。綿花のタネを買うときも、綿花を売る時も、買値や売値を知っていたのはモーゼスで、彼の持つ能力は素晴らしかった。それなのに、KKKに襲われて、町を去らねば身が危険になってしまう社会状況。妬みとか、やっかみ、人間の負の部分だと思います。白装束の中に隠れた人物を、目の見えないウィルが言い当てたのも、皮肉な感じがしました。竜巻が襲うシーン、地下室へ避難する様子は興味深かったです。エドナは、強く、優しくて、人間愛に優れていて、立派なお母さん、素敵な女性だと思いました。
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