言葉というコミュニケーションが出来ないため最後まで全く通じ合わないチンピラ川地民夫と黒人脱走兵チコ・ローランドのぎくしゃくした交流劇はイライラしつつも荒々しい撮影もあってヌーヴェル・ヴァーグやアメリカンニューシネマのような趣もあって刺激的で妙に面白い。チンピラはジャズが好きで黒人にも好意的なのに兵士はジャズに興味がないという設定が皮肉、そして劇判の演奏に超一流のジャズプレーヤーマックス・ローチとシンガーアビー・リンカーンが参加していることも二人の埋められない距離感を一層深めることに。
どこか漫画チックなラストは60年代に生きる人間たちの生々しい脱出願望が刻み込まれているようで心に引っ掛かる。
それにしても『狂熱の季節』といい本作といい60年という時代に大島渚や深作欣二に匹敵するホップでアナーキーな作品を作り上げた蔵原監督は凄い。
飼っていた犬のモンクが亡くなり、ショックを受けた川地が立ち寄ったジャズ喫茶店で「モンクが死んだ…」と呟きそれを聞いたお客(そのなかにブレイク前の藤竜也が)がセロニアス・モンクのことと勘違いしてざわめくシーンが笑える。
若い頃の大滝秀治の演技も見所。