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アルカトラズからの脱出のShoIkomaのレビュー・感想・評価

アルカトラズからの脱出(1979年製作の映画)
3.4
『大脱走』や『ショーシャンクの空に』を観たときは映画の魅力を知ったばかりの時期だったから、当時のようなカタルシスを得ることは相当な名作でないと難しいだろう。だが、この映画には満足感を得ることができた。前述の2作には及ばずとも。

 正直、期待していた作風とは違った。ある意味伝説的な存在となっている実在の脱獄犯フランク・モリスを名優クリント・イーストウッドが演じるのだから、彼の天才的な閃きやテクニックで難攻不落の刑務所を鮮やかに脱出する展開かと想像していた(必要以上に予備知識を入れなかったのもあるが)。しかし物語の中で語られたのは、忍耐と人情の連続だった。

 フランクは彼自身に降りかかる困難や理不尽に耐えつつ、次々と仲間を見つけて彼らとの絆を深めていった。そして、自らよりも仲間が受ける理不尽な仕打ちに怒り、それを脱獄へのモチベーションとした。実話ベースで、フランクにフィクションらしい「主人公補正」的な能力が無い(高IQという設定はあるが)ために、「努力、友情」のような分かりやすさが観客を引き込む要因になっている。

 元となった実話では計画実行までに2年ほどかかっているようだが、映画では焦りを誘う演出が散りばめられたスピーディーな進行になっている。フランクたちの行方の描き方や、バッツ、イングリッシュら残された者、そしてウォーデン所長の心境。緊張感のあとの余韻が心地良い映画だった。
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