猫脳髄

ペット・セメタリーの猫脳髄のレビュー・感想・評価

ペット・セメタリー(1989年製作の映画)
3.6
原作のスティーヴン・キングが脚本も担当し、キング主導で製作された復活系ホラー。キング自身、筋金入りのホラー・マニアのくせに、特に長編作品は寓話性が前景化しすぎるところがあり、なんだかフワッとしたファンタジー調にまとめてしまい、ホラーらしい奔放さがないのが気に入らない(逆に短編は素晴らしいが)。

子どもらしい綴りの間違いをそのままタイトルにした「動物墓地」(Pet Sematary)の奥に隠された先住民の墓所。そこに事故死した猫を葬ったところ、翌朝猫は何事もなかったかのように家に戻ってきた。今度は亡くなった幼い息子の亡骸を…という筋書き。

ほとんどの登場人物が死にかかわるトラウマを抱えている。それを「猿の手」風の古典的な”よみがえり”のテーマに絡めるのは都合がよすぎるように思える。コメディ・リリーフでもある「善い幽霊」が露骨に登場するのもキングあるあるだが、くっきりはっきりした幽霊には興味が失せる。ホラーを足掛かりにした「何か」の描出が鼻につくのだ。

本来なら★3.3~3.4程度だが、本作最高の見どころはブリティッシュ・ショートヘアのチャーチ君の愛くるしさと、無垢な幼児から豹変するミコ・ヒューズの熱演だろう。私もブリショ2匹を含めた猫軍団と暮らしているが、チャーチ君はかなり美形(※)でとても可愛らしい。「かいらしなぁ」と思ってたら倫理観ゼロ主人公に殺害されてしまい、怒り心頭である。それだけでストーリーの末路には悲劇性よりも喝采を送ってしまう。

※何でも撮影には7匹のブリショが投入されたそうだ。オレンジがかった目の若干小ぶりな子が滅法かいらしぃ
猫脳髄

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