Jeffrey

夢みるように眠りたいのJeffreyのレビュー・感想・評価

夢みるように眠りたい(1986年製作の映画)
3.5
「夢みるように眠りたい」

本作は二〇二〇年にデジタルリマスター版が完成してから全国の劇場で上映された林海象監督による傑作モノクロ・サイレント映画で、脚本、制作も務めた本作は、ベネチア国際映画祭には正式出品されており、英語字幕付き再生機能を見たらドナルド・リチーが英語訳を担当していて驚いた。当時29歳で全く無名で現場経験もゼロだった監督が描いた、モノクロニューサイレント映画は、映画愛に満ち溢れた今作の封切り当時、国内外を問わず多くの支持を集めた。しかしながら、「夢みるように眠りたい」のオリジナルフィルムはその後、関係者も含めて誰も行方を知らない、所在不明の状況に陥ったそうだ。時が経つにつれ、見たくても見られない幻の作品となりつつあった本作のフィルムが奇跡的に発掘されたのは公開より実に三十二年後の二〇一八年だったそうだ。

その翌年にクラウドファンディングによって世界中から支援を募り、映像技術会社イマジカ協力のもと、オリジナルネガ原版からのデジタル修復を行い、デジタルグレーディングには長田カメラマン、サウンドレストアには本作で結成されためいならCo.とオリジナルスタッフが再集結して林海監督全面監修による、作品本来の味わいを最大限に引き出した決定版として蘇った。今回、予告編(2Kスキャニング版)と英語版予告編と修復メイキング、監督のメッセージ、対談映像などが入っていたが、当時のパンフレットを復刻版としてブルーレイのケースに収録してくれていればもっと嬉しかったと言うのが本音のところだ。

さて、物語は大正七年。初めて女優主演映画と言われる帰山教正監督「生の輝き」の以前に、実は月島桜が主演した「永遠の謎」と言う映画があった。しかし、この作品は警視庁の映画検閲によって妨害され、ラストシーンがついに撮影されないまま、その名を映画史から消されてしまった。昭和の初め、東京。私立探偵、魚塚のもとに月島桜と名乗る老婆から、誘拐された娘、桔梗を探してほしいとの依頼が来る。調査を続けるうちに、魚塚はこの事件全体がまるでドラマのようにできすぎていることに気がついていく…と簡単に説明するとこんな感じで、佐野史郎の初主演映画である。冒頭の映写機の音が心地よく連続される中、時代劇(忍者もの)が上映され、老婆の手首のショットや後頭部のカット割りなど素晴らしく雰囲気が良い。昭和三〇年代を舞台にしたミステリー映画としては抜群に良い。しかも浅草でと言う風流な街で。
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