ぶどう

オーケストラ!のぶどうのネタバレレビュー・内容・結末

オーケストラ!(2009年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

タイピスト!と同じ製作チームとのことで鑑賞。

あらすじ
ロシアのボリショイ劇場の掃除夫アレクセイはもともと同劇場の天才指揮者だったが、30年前政治批判をしたとして指揮者を辞めさせられ掃除夫になっていた。団員たちも演奏者としての地位を奪われていた。
ある日劇場あてファックスでパリの劇場からボリショイに演奏依頼されたことを知る。ファックスを支配人に見せず、自分ともと自分のオケでその演奏を受けると勝手に返答し、かつての栄光を取り戻そうと奮闘する。

感想
よかっっったーー!!!
最後のパリでのコンサートシーンが12〜3分たっぷりあり、圧巻だった。特にソリストのアンヌマリーが演奏しながらアレクセイに心を開いていく様がよかった。とても感動して号泣してしまった。このシーンのために本作を観てほしいと思えるほどよかった。
そこまでの経緯で、正直言うとあり得ない展開が多くイライラさせられたり、途中から、アレクセイとヴァイオリンソリストとして演奏してもらうアンヌマリーとの謎の関係が予想できたりしていまいちかな、と思ってしまった。
これは大きな誤りで、アレクセイとアンヌマリーとの関係は予想とは違うものだった。やられた!またイライラさせる展開も最後のコンサートをより感動的に演出するための布石だったのかもしれない。
パリでのコンサートを成功させ、再び栄光を手に入れたアレクセイと団員達が、自分たちを軽んじてきたボリショイ劇場の支配人に一泡吹かせた場面で爽快な気分になった。
因みに演奏会までの経緯でイライラさせられた数々のシーンは多分笑う場面(本作の分類はコメディ)で、自分の捉え方が少数派だと思う。パリに行く日の飛行場までのバスが来なくて全員で歩いて空港に向かったり、正規ビザが間に合わず空港で偽装ビザを作ってもらったり、生活のために楽器も演奏会での衣装もなくてそれを現地調達したり、お小遣いをハイエナの様にせびったり、果ては、元プロとはいえ30年演奏してないのに練習はおろかリハまでなかったり(これは団員たちが久しぶりの国外でハメを外して遊んだりしたため)、など。
しかしこれらはロシア人の特徴あるあるで、うまくデフォルメされており、また、プロだったらブランクがあっても演奏はできる、と、ブログで解説されている方がおり、納得できた。しかしやはり日本人の自分からすると、あり得ないわーと感じてしまった。
再び音楽家としての地位を獲得したいと言うのがパリでのコンサートの目的のはずが、実はアレクセイも含め団員たちそれぞれに違う目的もあった、という構図が本作をその他の感動コメディものとは一線を画している様に思う。ロシアの社会情勢がちらっと窺い知れるところもよかった。
とにかく最後の演奏シーンは一見の価値あり。すばらしかった。
ぶどう

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