ルサチマ

マックス、モン・アムールのルサチマのレビュー・感想・評価

マックス、モン・アムール(1986年製作の映画)
4.9
再見。やはり戦後日本最大の作家を上げろと言われれば大島渚以外にいない。
雷雨の夜に客を招いた食事の席で初お披露目されたチンパンジーがシャーロット・ランプリングに色目を使い欲情するシーンの居心地の悪さは、そのまま彼女と猿がのっぴきならない関係であることを証明してしまう。主人も飼育を通じて性的嫉妬から、猿から信頼を置かれないことへのストレス、そして家庭内の不和による父権性の剥奪と、様々に狂気の中身が変貌していくのだが、外交官故の知性により、それらはわかりやすく表に出ることはなく、静かに顔面の下に影を生み出す。
猿のフリをし始めたり、「女王」との外交もサボるという突飛な行動に至るまでも、知性は確かに感じられるがゆえに、本気でこの男の狂いが際立つ。何層にも積み重なる芝居のリアルのレイヤーの描き分けが途轍もない。
社会派的な語られ方が際立つし、事実どの映画も社会との接点を徹底して考えているのだが、そうした政治的思想と演出が極めて高度な次元で結びついてしまうというのが、大島渚の凄まじさだと思う。
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