ガンギマリポテト

サムサッカーのガンギマリポテトのレビュー・感想・評価

サムサッカー(2005年製作の映画)
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【個人研究:映画とASD/ADHD⑦】

「そのままの自分を受け入れることが大事」
うん、キアヌに言われるとついつい「そうですよね!」と納得せざるを得ない流れが生まれてしまうけど、それは定型発達者として生まれてくることが前提とされている世界において、定型発達者が不安を抱えて生きていく場合の知恵っすよね。
ADHDやASDの場合ももちろん自己肯定が大切なのは変わりないけれど、発達障害当事者の場合、生きる上での大前提が定型発達者のそれとは違ってくるんだから、降りかかってくる不安や自己嫌悪、人間不信も多数派のそれとは当然異なってくるし、より重く病的な域に入るケースも多い。当事者やサポーターはそこの線引きをしっかり頭に入れて置かないと、結果的に多数派以上の不安や精神的疲労を抱えて走り回ることが強いられることになってしまう。そのディス・アドバンテージを埋めるためにコンサータやリタリンみたいな薬があるはずなんだけど、何だかこの映画では「安易な一発逆転マインドの産物」としか描かれていない。現実に薬に助けられてる人は沢山いるし、決して定型発達者にとってのマリファナやコカインとは違ったものなのに。主人公の依存先として指しゃぶりやマリファナと同列に描かれるのは違和感がある。

この映画は非常にウェルメイドで、全てのメッセージが丁寧に伝わるように優しく作られているけれど、最後だけその視点が抜けていて当事者にとっては酷なものになっていると思う。