たく

神経衰弱ぎりぎりの女たちのたくのレビュー・感想・評価

神経衰弱ぎりぎりの女たち(1987年製作の映画)
3.5
恋人に別れを切り出されて精神錯乱状態となった女性の周囲で起こる、2日間のドタバタを描くコメディ。ペドロ・アルモドバル監督が国際的に名を知られるきっかけになった作品で、ヴェネツィア国際映画祭脚本賞を受賞したり、アカデミー外国語映画賞にノミネートされたみたいだけど、自分にはちょっとピンとこなかったかな。女性の弱さと強さをすべてさらけ出す幕の内弁当的な作品のように感じた。アントニオ・バンデラスがめちゃくちゃ若くて驚いた。

タイトルバックに流れる男に捨てられた女の哀歌に始まり、ちょっとヌーベルバーグっぽい導入が続く。女たらしのイバンに別れを告げられた女優のペパが、なんとかイバンに連絡を取ろうと躍起になり、取り乱した彼女が衝動的にトマトジュースに大量の睡眠薬を入れたり、ベッドに火を付けたり、イバンになかなか繋がらない電話機を窓から放り投げて故障させたりと、手に負えない錯乱ぶり。そこにペパの友人のカンデラがやってきて、相手の男性がテロリストと知らずに恋仲になってしまったことで警察に追われてると告げてパニックを助長する。

ペパの住居を借りるために下見にやってきたカルロスと婚約者、そしてイバンの昔の恋人のルシアが絡んできてドタバタになる展開で、当のイバンはペパたちの思惑をよそに女性弁護士と旅行に出かけようとしてるという救いようのない状況。終盤で、ルシアが周囲に完治したと嘘をついてた精神病が再発するのが怖くて、彼女と対照的に心の整理をつけて立ち直るペパに女の逞しさを見た。カンデラは男に流されやすい弱い女の象徴で、イバンの血を受け継いだ息子のカルロスに迫られて拒否できない感じが上手く出てたね。ところどころでBGMにリムスキー・コルサコフの「シェヘラザード」が流れるんだけど、この千夜一夜物語のシェヘラザードは残酷な王を物語への興味で引っ張る聡明な女性で、本作に登場する男に振り回される女性たちと正反対なところに皮肉を感じた。
たく

たく