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イースター・パレードのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

イースター・パレード(1948年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

1910年代のニューヨーク。ダンサーのドン・ヒューズは自らその才能を見いだした恋人ナディーンとコンビを組んで人気を集めていたが、ナディーンは他の興行に引き抜かれ、ドンのもとを去ってしまう。自暴自棄になった彼は、酔った勢いで酒場の踊り子ハンナをスカウトするのだが…。

子どもの頃にTV放送で見て以来の再鑑賞。
当時は「オズの魔法使い」のジュディ・ガーランドとフレッド・アステアのミュージカルスター同士の共演などとは知らず、ただアステアのダンスに圧倒された記憶がある。
アステアのキレのあるダンスとラブコメを堪能出来るミュージカル映画の秀作である。
冒頭、恋人のナディーンにウサギのぬいぐるみを買うべく、大人気なくぬいぐるみを譲らない子どもの興味を逸らすダンスがまず圧巻。
華麗なタップを交えてリズムを刻みながら店内を舞い、足やステッキでもドラムを叩く。
ワンカット撮影なのが、舞台の一幕を見ているかのようだ。
こんなにも人間の身体は軽やかに動くものなのか?と思うほど感動的である。

ダンスの基本すら知らない田舎娘のハンナを新たな相手役に育て上げるべく四苦八苦するドン。
後の「マイ・フェア・レディ」に通じるようなコーチの手解きが始まる。

やがて、ハンナの個性をいかせば上手くいくことに気づくドン。
ジュディ・ガーランド演じるハンナは子役出身のためか、田舎出身の乙女としての可愛らしさがあり、一方でナディーン役のアン・ミラーは都会的で洗練された感がある。
アン・ミラーの歌とタップはエンターテイナーとして堂々としたものにし、ジュディ・ガーランドは歌も踊りもコミカルにしてキャラクターの対比を狙っている。

ハンナの天真爛漫な明るさを生かした飾り気のないコミカルなダンスは評判となり、ナディーンの興行主から契約を持ちかけられる。
しかし、ナディーンと同じ舞台に立つこと嫌ったドンはプライドから、これを断ってしまう。

別の興行主と契約したドンとハンナは地方での興行を重ね、ついにブロードウェイのショーで大成功を収める。
この舞台で突如アステアの動きがスローモーションになるが、どこで止めても絵画のようにサマになっているから流石だ。
どれだけアステアの動きが美しいかが分かる面白い演出である。
かと、思えばドンとハンナが乞食に扮したコミカルな一幕もある。
これは、ひとつ間違えば評判を落とし、路頭に迷うというショービジネスの厳しさを皮肉ったものだろう。
戦後間もない当時のご時世も考えると、コミカルなのだが心から笑えない。

舞台を通して、ドンもハンナも互いにパートナー以上の感情を抱き始める。
ブロードウェイ初日の成功の打ち上げにドンはハンナを連れて、ナディーンのショーを見に訪れる。
そこでも観客から手厚い祝福を受けている2人を見てナディーンはヨリを戻そうと、ドンを無理矢理ダンスに誘う。
ダンスに嫉妬したハンナは耐えられずその場を逃げ去ってしまう。
そのダンスはかつてハンナに踊らせようとした振り付けだから無理もない。
あまりにも2人の息の合った優雅なダンスに見てるコチラも惚れ惚れとしてしまう。

終盤は一気にラブコメ全開に。
アパートに閉じこもるハンナを必死に説得するドン。
最初こそナディーンを振り向かせるためにコンビを組んだが、いつしかナディーン以上にハンナを愛するようになった、と打ち明ける。
一夜明けたイースターサンデーでは街中を行く華やかなパレードの列に、仲睦まじく歩き、注目を集めるドンとハンナの姿があった…。

スローモーションの演出を除き、どのダンスも生のステージようにワンカットでの一発撮りなのがやはり凄い。
しかも広角で身体の動きを存分に見せる。
ショービジネスの舞台では当たり前のことなのだが、息も切らさず笑顔で歌い、踊り切るアステアのダンスは名人芸の域。

街中で男たちが振り向くようだったらパートナーとして考えると、ハンナに難題をぶつけて一緒に歩くシーンではハンナの変顔に男たちがみんな振り返る。
サラダの素材を色んな国の人のモノマネをしながら延々語って笑わせるレストランのウェイターなどギャグのスパイスも良い。
ドンの友人の美男子ジョニーがナディーンにもハンナにも関わり、話をややこしくするラブコメのスパイスもあり、見る者を飽きさせない。

親子ほど歳が離れて見えるアステアとガーランドの恋というのが現実離れしている。
また恋愛ドラマに深みがないのが難点ではあるが、現代のミュージカル映画でもこの天真爛漫さとダンスの質は本作に遥かに及ばない。
これだけ時代を経ても心が踊り、面白いおかしく見れるのは驚異的である。
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