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約束の旅路のodyssのレビュー・感想・評価

約束の旅路(2005年製作の映画)
3.7
【一見に値する映画】

ラデュ・ミヘイレアニュ監督作品。 

1984年、スーダンにたどりついたエチオピア難民たち。しかし生活は困窮を極めている。夫や子供に死なれ、ただ一人生き残った男の子と暮らす母親は、エチオピア難民のうちユダヤ人とされる人々だけがイスラエルに移住できるところに目を付け、ユダヤ人のふりをしてイスラエルに行き生き延びて何者かになるよう子供に命じる。 

少年はイスラエルでリベラルで裕福なフランス系ユダヤ人家庭に引き取られて育てられる。しかし自分のアイデンティティに悩み、学校や社会でも様々な事件に遭遇してゆく・・・。 

物語としてはやや類型的で甘いところもあるが、背景にある社会問題や民族問題がきわめて重く、欠点を十二分に補っている映画である。旧約聖書のシバの女王伝説に端を発する黒人のユダヤ人という存在、イスラエル社会内部に見られる様々な出自のユダヤ人同士の確執、アフリカと中東地域の錯綜した関係などなど、盛り込まれた内容は豊富で多岐に渡り、考えさせられるところの多い作品と言える。
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