ななし

パプリカのななしのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.0
お盆やすみ、名画座、アニメ映画、夏──これだけで映画本編うんぬんより、もう体験として”勝ってる”感じがある。

「夢」の世界への干渉というモチーフは、クリストファー・ノーランの『インセプション』なんかを想起してしまうわけだが、当然ながら『パプリカ』のほうが5年以上はやい(筒井康隆の原作はさらに昔)。

夢世界の夢幻的なビジョンは伸縮自在のアニメーションとの相性はバッチリで、その点ではアニメーションを鑑賞する根源的な喜びに満ちている(その点では本年公開のアニメ映画『君たちはどう生きるか』を想起した)。

平沢進の音楽も作品世界を印象づける上で決定的な役割を果たしていると思えて、個人的には本作のMVPは彼なのではないかと感じた。

とはいえ、個々のキャラクターの感情線がやや追いづらく、とくに主人公の敦子と彼女の夢人格である「パプリカ」の関係性が見えづらいなど(なぜ、彼女だけが二重人格みたいになっている?)、ドラマとしては少々混乱している印象を受けないでもない。いっそ120分くらいあってもよいのではないかと思えた。
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