カッパロー

パプリカのカッパローのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.6
夢に生き、現実に生きる。

今敏作品は千年女優に次いで2作目。正直言って、今作の方が断然好みだった。

まず、構想の時点で勝ちと言っても良い。非人間的な現実と対比される、人間的な部分の逃避先としての夢。侵食し人を蝕む病魔としての夢。そしてそれらの中を自由に飛び回るパプリカ。どれをとっても面白いアイデアで飽きることがなかった。奇妙でありながら美麗な今作品特有の映像が、夢という題材と組み合わさって奇跡的なシナジーを生み出していた。これは平沢進の音楽についても同様。曲としてのパプリカは聴いたことがあったけれど、それが劇に入るとここまでの輝きを持つものかと驚いた。

キャラも良かった。ひとりひとりに理由があり、人生があった。特に刑事のおじさんがかなり刺さったかなぁ。この映画は彼が過去と向き合う物語でもある。若い頃の記憶とか後悔って杭のように埋まって抜けなくなるものだけど、パプリカの助けを得てそれが露出していく様は見事だったなぁ。題材を映画にして自己言及していく仕組みも面白かった。

結局ロマンスの物語で締めているのも大好き。夢のパプリカが活躍する物語だけど、現実のあっちゃんの成長の物語でもあるんだよね。素直になれて、良かった。お幸せに。
カッパロー

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