Marimo

ハンニバルのMarimoのレビュー・感想・評価

ハンニバル(2001年製作の映画)
4.9
究極の愛

わたしは心理学に詳しいわけでもなんでもないからよくわからないけれどレクターはサイコパスの一言では片付けられないと思う

恋だの愛だのそれに似た何かしらの感情を持ちはじめると途端に魅力を失うサイコパス映画が多い中でこれは真逆、レクターの魅力が増す。クラリスの魅力も増す。レクターは最悪の連続殺人犯であることは間違いないんだけど、厚みのあるサイコというか人間性、過去に興味を持たせてくれるキャラクターだと感じる。(ハンニバルドラマシリーズで過去が知れる!wowowオンデマンド!)



「羊たちの沈黙」でレクターが交換条件としてクラリスの過去を聞き出した動機は精神分析をして彼女を支配するため。でもそれだけじゃなくて彼女の決して曲がらない信念、「ハンニバル」最後でああなることをすべて見越したうえで彼女を気に入り、彼女に期待した。サイコパスは常に退屈しているし社会に絶望している。最初はいい遊び相手になると思っていたクラリスはストックホルム症候群にもならず、絶望的な景色の前でも決して屈せず、レクターに対し最後まで正義を持ってFBIとして接した。ヴァージャーの言葉を借りるなら彼女は「劣化」しなかった。いつか食べてしまいたいお気に入りの退屈凌ぎは自分が殺して食べていい存在ではないということを徐々に実感していったレクター、ある種の尊敬の念と愛をクラリスに向けていた。レクターからの手紙の中の一文「社会の人間はゴミ同然、そして自分もその一部であることに君はがっかりしているのかい?」これは明らかにクラリスが自分と同じ土俵にこれるレベルかを見定める機会を掴むために挑戦しにきてる、、



ブランドバッグに安物の靴、いかにも田舎上がりの小娘だと馬鹿にしていたレクターが10年後にGUCCIの靴をプレゼントするなんて愛以外の何物でもない。彼にとっての快楽は見せしめで相手の肉を食うことで女に無理矢理キスすることじゃない。あのキスはあまりにも一方的で押し付けの愛。その感情を引き出したクラリス、はんぱない。



ダンテ「新生」からの最初のソネットもレクターとクラリスの出会いのことなのかなきっと、、
‘’毎日男が女への飢えを感じても姿を見ただけで満腹になることは可能”
レクターがクラリスに対しそうであったように。
ただし‘’クラリス(女)はレクター(男)の痛みを理解できるのか?”

んー!!!ジョディフォスターでみたかったっっっ!!!!
Marimo

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