田畑ヒロアキ

母なる証明の田畑ヒロアキのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
5.0
宇多丸さんが「無茶苦茶面白くてよく出来た変な映画」「俺の手に余る。評論としては完全に敗北」と話してたのを聞いて安心した…

と言うのも、俺としても本作は超絶大傑作であると同時に全くもって説明のしようがない映画だったからだ。
「面白かった」と言うのは簡単だが、「どう面白かったか?」と聞かれると答えられない。最近の映画で例えるとスリービルボード並みに感情をかき乱される感じ。
良かった部分についても、挙げだしたらキリがないし、そもそもどこから手を付けていいのか分からない。
宇多丸さんですら「この作品について少しも語れた気がしない」と評してる本作を語彙力ない俺が語れる訳がねえ!!

…でも俺はそんなポン・ジュノ監督作品が大好物だ。彼の映画は一見無駄だらけのように見えるが全てに意味がある。

そして彼の作品が"どこか変"な理由とは、本筋の裏にも別のテーマが存在するからだと考える。つまり、物語の主旨とは姿かたちが異なる別物のもう一つの主旨が同時進行して話が展開されるのだ。
例えば本作では、【息子の無実を証明するため母が真実を追求する】と言うのが本筋だが、監督曰く【セックスをテーマにした映画でもある】そうだ。
「はぁ?」となるが、セックスを念頭に置いた上で改めて鑑賞すると、確かにそう言う映画であるようにも見える。韓国のレイプ事件や近親相姦の多さ、女性蔑視を痛烈に批判した作品にも取れる構成になっている。これが先ほど話した、姿かたちが異なる別物の主旨だ。
ちなみに、ポン監督の『グエムル 漢江の怪物』や新作の『オクジャ』にも上記の物語構造は共通している。

こうした物語構造のせいで"見事なまでによく出来た説明しようがない変な映画"に仕上がっている。

他にも褒めどころだらけだが、長くなってしまうのでこの辺で終わりにしよう。
注意深く観察すれば思わぬ発見がある映画だから繰り返し見れば見るほど面白い。最高に気持ちいい伏線回収も味わえるのでぜひ。

このレビューが説得力に欠けているのは重々承知だが、それでも俺は本作を人に勧め続けてやる!!とにかく観てくれ!そして悶々とするんだ!!!

p.s.立ちションの場面がマジで凄いよ。