ゴン太くん

どっこい! 人間節-寿・自由労働者の街のゴン太くんのレビュー・感想・評価

4.0
寿町は一度間違って入り込み、何とも言えない閉塞を感じて早く出ないと…と思ったことがある。いまではアーティストの活動スペースができたり先進的なホテルが建設されるなど、町のあり方は変わってきている。しかし、人口における老人率の異様な高さが示すように、ドヤ街で生活してきた人たちの拠点というのはあれから変わっていないようだ。
映画の方は白黒だが、すでに1975年。前半に登場する田中さんという方は撮影後すぐに亡くなったそうだが、計算するとおそらく27歳くらい。顔に刻まれたシワの数々だけを見れば、40代後半と言われても信じるだろう。西村賢太の小説にもドヤ街の描写があるが、そこに描かれた様子が正月の職安前の映像として残っている。労働者同士の平行線が続く議論の厄介さ…行き止まりの貧困さだけでなく、人間関係にも閉塞が現れているが、度々口にされる寿町の人たちの優しさ…私の地元もそうだが「人情」という言葉は、こうした生きるか死ぬか、という場面でものを言うものだったようだ、大昔は。